2020 年、新型コロナウイルス感染症のためVODでやった授業をYou Tubeに載せる方法を学びました。1回から8回までの講義を全てZOOMで作成しました。結構労力がかかりました。せっかくなので講義用のmy logだけでなくYou Tubeで紹介することにしました。
第1回は概要、地球環境の推移と生物、原核生物(細菌)の進化です。
概要(解説)https://www.youtube.com/watch?v=XPdjeHOviZI
地球環境 https://www.youtube.com/watch?v=pkd9nKv40Mc
真正細菌 https://www.youtube.com/watch?v=orwUICealGo&t=378s
古細菌 https://www.youtube.com/watch?v=79d2ynGN4_Q
第2回は最初の真核生物である単細胞の原生動物とそれに感染するウイルスです。
原生生物 https://www.youtube.com/watch?v=lsRPFVtpET0
共生 https://www.youtube.com/watch?v=2KyUyMsbXuk
原虫 https://www.youtube.com/watch?v=YUJw2tH-QQE
ウイルス https://www.youtube.com/watch?v=o6fAJUaiqdU&t=0s
第3回は単純多細胞生物群です、真菌から3胚葉の寄生虫(扁形、線形動物)までです。
真菌 https://www.youtube.co/watch?v=hOmmyBgWMxU
寄生虫 https://www.youtube.co/watch?v=RehWSBHlBow
第4回は無脊椎動物の代表として節足動物。海の甲殻類と陸の昆虫です。
概要 https://www.youtube.com/watch?v=9cTFEdMaLBY&t=0s
軟体動物 https://www.youtube.com/watch?v=oM5l0gfm5pY&t=0s
甲殻類 https://www.youtube.com/watch?v=hyrHHHiUWbc&t=0s
昆虫 https://www.youtube.com/watch?v=CM1ADBwP1Z8&t=0s
第5回は脊索動物(ホメオボックスの原点)、無顎類、魚類、両生類、爬虫類です
脊索動物 https://www.youtube.com/watch?v=p7Q-RU0Jw-w
魚類・両生類・爬虫類 https://www.youtube.com/watch?v=3-o8W52Fr7Q
ゲノムと進化 https://www.youtube.com/watch?v=D_IQa8R8k30
第6回は鳥類と哺乳類の比較、免疫系、胎盤構造について考えてみます
免疫・胎盤 https://www.youtube.com/watch?v=H7EbOvU5cjs
翼手目・視覚系 https://www.youtube.com/watch?v=4ZCctYVilhI
第7回は、霊長類に絞って、サル類、類人猿、ヒトへの進化です。ヒトの特性は?
霊長類・ゲノム https://www.youtube.com/watch?v=TwAY6mSSm3w
ネオテニー https://www.youtube.com/watch?v=m6LGuQGCvdA
脳と情報 https://www.youtube.com/watch?v=13EDnqrzzV4
第8回はまとめです。進化論から認識される世界とは?One World.
2020年秋①学期の講義で6回目です。これまでの講義を見なおし、1回目の講義を始まる前に、まず、この概論をやることにしました。進化論は範囲が広すぎるので、全部を終えた後に、まとめる方式でやってきましたが、無理があるように思いました。発想を変えて、最初に結論を概観し、そのあと各論から始めようと思ったわけです。
今回は、この方式でやってみようと考えています。また、ウイルスにも取りくもうと考えました。新型コロナウイルス感染症で世界中がこれだけの影響を受ける存在を、無生物として無視するのはおかしいと考えたからです。
https://www.youtube.com/watch?v=XPdjeHOviZI
さらに、ヒトのゲノムを見ても、ヒトの2万の遺伝子をコードしている部分は約1.5%です。他方、ヒトゲノムに占めるレトロウイルスの断片だけでも8%あります。また、最近は大腸菌よりもはるかに大きなウイルスが見つかり、我々が探さなかっただけで、かつての微生物と同様に、ウイルスは大きな世界を持っているかもしれません。ウイルスなしには、生物はここまで来なかったように思います。
今回の授業から初めて、ウイルスを進化論の中に取り込むことにしました。 感染症としてだけでなく、生物の進化、特にレトロウイルス由来のトランスポゾンのように、生物のゲノム構造に多大な影響をあたえ生物とともに共進化してきたウイルスを非生物として無視することは、地球環境の変化を無視して、いわゆる生物だけで進化を完結しようする生物学者の考え方の狭さだと気づきました。これは、医学者や獣医学者が生物学者を無視して原虫や寄生虫を教えるのと同様の弱点ではないかと思ったからです。
2018年(平成30年)4月、春①学期、岡山理科大学獣医学部の最初の授業の一つである現代人の科学「生物の進化」が始まりました。合計8回で40憶年の生物の進化と多様性について学修します。講義の内容は、70歳を過ぎた私が自分で理解できた範囲で編集してあります。従って、これといった教科書はありません。また、その内容は、決して容易ではありません。個々の事象をバラバラに丸暗記するよりも、全体として生物がどのように進化してきたかを理解してください。環境に適応するために、各時点でどのように複雑化したか?また、どのように地球を作り変えたのか?日頃見ることのできない微生物の存在と、原核細胞が真核細胞へ、単細胞生物が単純多細胞生物へ、そして高度に複雑化した多細胞生物の爆発的拡散、霊長類から人へのつながりが理解できればそれでいいです。
進化と多様性は、決して単純ではないことが理解できれば十分です。最後の8回目に、内容を振り返ってみましょう。「ヒトはどこからきて、ヒトは何者で、一体どこに向かって行くのか?」考えてみるきっかけになれば幸いです。この授業で得られる情報は、今後始まる専門の講義の中に何度も出てくるはずですから、そのたびにこのスライド群に戻って考えてみてください。
ゴールデン・ウイーク中に、学生さんへの宿題、「各回の講義で分かった単語5個、わからなかった単語5個を提出しなさい」をだしました。教えながら自分でもよくわからなかった単語が沢山送られてきて、勉強になりました。わかった単語も、理解してくれたのだなと、少し安心できました。
質問の多かった単語、理解してほしいと思った単語、面白い質問と思った単語をそれぞれ50音順に並べました。もう一度見てください。他の学生さんが理解にてごずった単語もあります。自分ならどのように説明するかも考えてみてください。いろいろな仮説を考えることは楽しいことです。時間があったら、互いに議論してみるものいいでしょう。学生さんから寄せられた質問と説明は、次回、秋①の授業に役立たせてもらいます。感謝。
第1回質問回答集
αプロテオ菌:どのような役割をになっているのか?原生生物界(モネラ界)のプロテオバクテリア門にはαからεまでの綱があります。αプロテオ菌の代表的なものにはリケッチアがあります。この菌は細胞寄生性が強く、大食細胞(マクロファージ)に貪食されても消化されにくい性質があります。ミトコンドリアの祖先もαプロテオ菌と考えられており、いまでも我々の全ての細胞内に共生し、エネルギーを生産しています。
αプロテオ細菌とは?モネラ界、プロテオバクテリア門、αプロテオバクテリア綱は非常に多
様な細菌群です。ある属は光をエネルギー源として利用する光り栄養細菌(光合成細菌)であり、その一部はC1化合物(炭素が一つの化合物)を代謝します。またある属は植物共生細菌(根粒菌)であり、ある属は節足動物の内生菌(ボルビキア菌、細胞内で共生する)、ある属はリケッチアのように細胞内侵襲性の病原菌です。すでに絶滅しましたが、真核生物の細胞に侵入して(貪食されて)現在のミトコンドリアとなったプロトミトコンドリアもいます。多様すぎで一言でまとめるのが難し いグループですね。変幻自在の神の名をとってプロテオ菌と呼ばれています。
Fプラスミド→細菌は全てプラスミドを持っているという認識を今までしていました。メスの細菌が通常のプラスミドと別にFプラスミドを持っているという認識であっていますか。雄(性線毛を通じてゲノムを挿入できる)の細菌がF因子を持っていて、F因子を持たない細菌が雌に相当します。多くの細菌がプラスミドをもっているわけではありません。またプラスミドには毒素因子や薬剤耐性遺伝子や病原性遺伝子など沢山の種類があります。2分裂の繰り返し(クローン増殖)では、完全コピーができるだけで細菌の多様性は生まれません。接合やプラスミドなど遺伝子を運ぶ分子によって細菌は多様性を作り出し、環境変化に適応しています。
外膜とグラム陰性菌の関係:グラム染色ではクリスタルバイオレットで陽性に染まる厚い細胞壁をもつ細菌がグラム陽性菌で、染色されない薄い細胞壁をもつ細菌がグラム陰性菌です。グラム陰性菌が細胞壁の外側に外膜を持つのに対し、グラム陽性菌は外膜を持っていません。外膜はリポポリサッカライド(lipopolysaccharide, 脂質多糖体)で内側からリピドA,コア・オリゴ糖、O抗原多糖の3層から出来ています。グラム陰性菌の外膜は細菌の内毒素(LPS)としても重要です。
核、核様体?:核も核様体も機能としてはゲノムなので同じものです。真核細胞では核膜に包まれたゲノムを核といい、原核生物は核膜を持たず、ゲノムが細胞質にむき出しで存在するので核の様なものという意味で核様体と呼んでいます。
核様体:どの部分を指すのか?わかりません。細菌の染色体に相当するものです。細菌は真核細胞と異なりゲノムを核膜内に収めていません。細胞質にほどけたまま存在するので、このように呼びます。
紅色光合成細菌:光合成細菌(光合成するもの、光合成器官をもつもの、光合成色素:バクテリアクロロフィルを有するものを含みます)で、酸素を発生せず、カルテノイドを蓄積し赤色~褐色を呈する細菌を紅色光合成細菌といいます。この菌群はさらに電子供与体として硫黄を用いる紅色光合成硫黄細菌と硫黄を用いない紅色光合成非硫黄細菌に分かれます。
極限環境:どのような条件下か?地球上に存在する極めて特殊な環境です。例えば、通常では生物が生息できない高熱(超高熱温泉)、高塩(死海のような塩分の極端に高い湖)、硫酸の池などです。古細菌の多くはこうした極限状態の環境にも生存しています。
莢膜とは?:莢膜(capsule:カプセルの意味です)は、一部の細菌が細胞壁の外側に作る被膜状のものです。本当の生体膜ではなく、細菌が分泌したゲル状の粘質物が、細胞表面にほぼ均一な厚さで層を成し、膜状に見えるのでこの名前が付きました。白血球による細菌の食作用など、宿主の免疫機構によって排除されることを回避する役割を持ち、病原菌の病原性に関与しています。抗原の種類としてはK抗原で、血清型の分類に使われます。
グラム陰性菌:グラム陽性菌との違いは?グラム染色で紫色(ゲンチアナバイオレット)に染まらない細菌群です。染色性は細胞壁の厚さによります。陽性菌は厚い細胞壁をもつ細菌群で細胞壁にとりこまれた色素が脱色されないために、紫色にそまります。基本的に陽性菌はペニシリンのような細胞壁合成を阻害する抗生物質に感受性ですが、陰性菌はこの種の抗生物質には抵抗性です。また外膜に脂質多糖類(LPS)やO抗原を持っています。大腸菌は、菌の表面にある抗原(O抗原:外膜の多糖)と、表面から伸びる鞭毛にある抗原(H抗原)により分類されています(例えば:O157H7)。普通の大腸菌は、寒天の上で培養すると、鞭毛により動くので、そのコロニーは濁って見えます。べん毛を持っていない大腸菌は培養しても曇って見えません。菌の表面にある抗原はこの「曇りが生じない」(ohne Hauchbildung)大腸菌から発見されたことから、O抗原という名前が付きました。今ではO抗原は外膜の多糖、H抗原は鞭毛、F抗原は線毛、K抗原が莢膜です。
クロマトフォア、クロロゾーム→紅色光合成細菌と緑色光合成細菌はほぼ同じ働きと機能を持つと思っていたのですが、どちらも中にバクテリオクロロフィルを入れるのに紅色光合成細菌と緑色光合成細菌で由来が異なる光合成器官を用いるのはどうしてですか。面白い疑問です!類似した働きと機能を持つ点ではその通りです。我々の細胞にも膜状の折り畳み構造を持つ小胞体とリソゾームやファゴゾームのような袋構造を持つ細胞内小器官があります。おそらく独自に分岐した紅色細菌と緑色細菌がそれぞれクロロフィルを入れるのに違う膜構造を作ったのでしょう。しいて言うなら小胞体構造のほうが表面積は大きいです。光受容体蛋白として紅色は長波長(濁った水中)の緑色は短波長(済んだ水中)の光を吸収します。光エネルギー的には紫が強く、赤が弱いので、紅色細菌が小胞体のように表面積を増やしたのは、そんなところに関係するかもしれませんね。この時は、このような解釈でしたが、2019年度の学生さんの再度の質問で明らかになりました(現代生物進化2に図を載せました)。脂質2重膜の膜表面に光合成に必要な分子群を埋め込んだもの(クロマトフォア)と、光合成に必要な分子群をまとめて脂質1重膜で包んだ(クロロゾーム)違いです。
クロロゾーム…光合成器官の葉緑体と何が違うのか分からない。基本的には、特に変わりません。細菌のクロロフィル(Mgを含むポルフィリン環)を入れているのがクロロゾームです。葉緑体の葉緑素と基本的には同じです。
嫌気呼吸と好気呼吸とATP:呼吸は代謝でありエネルギー(ATP)生産です。好気呼吸は、有機物(糖など)を酸素を使って分解しエネルギーを取り出します。好気呼吸では有機物を水と二酸化炭素まで完全に分解できることで、有機物当たりで得られるエネルギーが大きいです(ATP量が多い、解糖系で36 or 38ATP)。他方嫌気呼吸では酸素を使わず有機物を分解する代謝で、有機物を完全に分解することは出来ません。従ってエネルギーの効率が悪く(ATP産生が低い、例:乳酸発酵では2ATP)老廃物として有機物が残ります。
嫌気性光合成細菌:ほとんどの光合成細菌は嫌気性です。酸素を放出しない光合成細菌は、光エネルギーを利用して二酸化炭素を同化し、有機物とATPをつくりますが、電子供与体として水を使わない(通常、硫化水素などを使う)ので、酸素を放出しません。代わりに硫黄を放出します。
嫌気性従属栄養菌:他の生物が作った有機物(糖など)を利用して、酸素を使わないで(酸素を最終電子受容体としないで)ATPを作る細菌になります。糖を利用してアルコール発酵をする細菌などがこの例になります。
原始光合成細菌が光子から電子、ATP産生に行く経路は?分子が光子を吸収すると励起状態となり吸収した光エネルギー分だけエネルギーの高い状態ができます(光子による励起)。その結果、電子が分子の外へ飛び出しやすくなり,近くに電子を受け取りやすい分子が存在すると簡単にそちらに移ります(電子放出と電子伝達)。電子を放出した分子は還元、伝達経路で電子を受け取った分子は酸化されます。分子の安定化のために水分子(H2O)を分解し、酸素と水素を利用します。供与体に電子を与えた陽子(H+)は、プロトンポンプによりATPを産生します。
細菌の性転換:多様性を獲得する以外で性転換を行う利点はあるのか。性転換 (F因子の獲得あるいは消失)というよりもゲノムを混合し、遺伝子組換えにより多様性を獲得し、様々な環境変化に適応することが目的です。ウイルスからヒトまですべての生物は新しい遺伝子を取り込むことにより進化し、環境中に適応放散してきたのです。
細菌総数の重量が人の総重量の8000倍となる計算は?もとになった論文はnatureに乗って いた総ウイルスの重量です。地球上の総ウイルス数は1030個、重量を共通化するために総 炭素重量に換算するとシロナガスクジラ7500万頭という計算です。ここからは自分で計算 しました。シロナガスクジラの平均重量は140トンなので、7.5x107x14 0
t=7.5x107x1.4x105kg=1.1x1013kgになります。ヒトは70億人の重量で
7x109x平均40kg=2.8x1011kgでウイルスの総重量がヒトの総重量の40倍です。 細菌の総数は1031個といわれています。100nmのウイルス(球形)が細菌1個中に平 均何個入るかですが、長さ2μmで底面積の半径120nmとして、約20個入ります。従って 40x10x20=8000ということになります。
細胞壁とムレインの関係:細胞壁は動物細胞にはないのであまりなじみがありませんが、生物種によってその組成が異なります。細菌の多くはペプチドグリカン(アミノ酸と糖)で細胞壁を合成しており、ムレインと呼ばれています。Mureinの語源は、ギリシャ語のmurus(壁)の意味です。
細胞膜阻害剤→なぜ抗生物質の働きとして細胞膜の働きを阻害するのか、その効果が分からない。細胞膜障害を起こす抗生物質の多くは、細胞膜に穴をあけて細胞を破壊する分子です。アンフォテリシンやコリスチン等が有名です。いわゆる抗生物質のほかに昆虫など多くの生物が産生する抗菌ペプチドも類似の作用を持っているものがあります。
宿主…最後に出現した生物群とあるが寄生される対象のことではないのか。そうです、寄
生体が寄生する対象が宿主です。ただ、人や家畜の感染症では宿主は、系統樹では最後
に出現した生物群、病原体は地球上の初期に出現した生物群といえるということです。
硝化細菌:硝化細菌はアンモニウムイオンを、亜硝酸イオンを経て硝酸イオンに酸化する細菌群です。土壌や河川、湖沼などの水界に分布し、アンモニウムイオンなどを酸化することによりATPを産生し、増殖に必要なエネルギーを得ています。
他方、炭酸同化(炭酸固定)は、生物が大気中や水中などの二酸化炭素を体内に取り入れて、有機物を合成する働きのことを指します。炭素を非光合成的にエネルギー源として利用する細菌は、CO2を使い光合成ではなく無機物質の酸化反応でできたエネルギーを用いて有機化合物を作る細菌類(化学合成無機栄養生物)」になります。
また古細菌のメタン産生菌では4 H 2 + CO 2 ⟶ CH 4 + 2 H 2 O の代謝を行います。この代謝系は別名炭酸塩呼吸ともいわれます。メタン菌の有する代謝系のひとつで、水素、ギ酸、酢酸などの電子を用いて二酸化炭素をメタンまで還元する系です。メタン菌以外の生物はこの代謝系を持っていません。
真正細菌はなぜ真正?:細菌の進化の仮説で、一時期、古細菌(はじめ、根源arche-bacteria)のほうが真正細菌よりも古い起源を持つとされていた時期があります。その後の分子生物学やゲノム解析の結果、真正細菌から古細菌が分かれたことになり、一般細菌が真正細菌(真のeu-bacteria)となりました。
真正細菌と古細菌の違い。なぜ古細菌は真核生物に近いか?:真正細菌類が環境の変化に適応し、地球上で広範囲に生息しているのに対し、古細菌は極限状態の地域に生息している のが特徴。ゲノムの解析が進んだ結果、①真正細菌と古細菌は、細菌の進化の極く初期に 分岐していること、②古細菌は種々の代謝系や遺伝子が真正細菌よりも真核生物に類似性 を持つことがわかりました。おそらく真核生物に進化する母体となったためでしょう。
従属栄養細菌:ミトコンドリア(αプロテオ細菌)との関係。プロテオバクテリア門、αプロテオバクテリア綱の中には細胞に貪食されても消化されにくい(共生あるいは偏性細胞内寄生する)性質を持つ細菌がいます。この中で、光合成細菌などが産生する糖を分解し、酸素を最終電子受容体として利用しATPを産生する好気性菌の一つがミトコンドリアとなったαプロテオ細菌と考えられています。ミトコンドリアのTCAサイクルは、αプロテオ細菌に見られるエネルギー産生(代謝)系です。
性接合:どのようなものなのか。説明が難しいですが、細菌同士が性線毛を介して遺伝子を組み換えることです。接合因子を持った細菌(雄)がそのゲノムを因子を持たない細菌(雌)に注入し、遺伝子組み換えを行う方法です。
耐性菌:耐性菌を応用した薬品を作ることは出来るのか。耐性菌の耐性遺伝子が明らかになれば、耐性酵素を分解する薬を作り耐性菌を殺すことができます。また薬剤耐性遺伝子を野菜に組み込んで、感受性の細菌などを抗生物質で殺すこともできます。
脱窒素作用:どのようにして窒素を大気中に戻すのか、またその目的は何なのか。根粒バク
テリアのようにアンモニアを酸化して硝酸塩を合成する細菌を硝化細菌という。植物の根に共生し、窒素を栄養源として供給します。反対に硝酸や亜硝酸を還元する脱窒素細菌によって窒素ガス N2 に変化する作用を脱膣作用といいます。大気中に窒素を戻します。ともに細菌にとってはATP(エネルギー)を産生する過程です。
炭疽:病気の詳細が分からない。そのうちに何度も習います。グラム陽性の大桿菌で芽胞
を作ります。土壌菌ですが家畜にも人にも病気をおこします。ヒトでは汚染食品からは腸炭疽、接触感染では皮膚炭疽、芽胞を大量に吸い込むと致死的な肺炭疽をおこします。これはバイオテロに用いられました(米国の白い粉事件)
小さな杖:なぜこの言葉が語源になったのか。顕微鏡で見た細菌の多くが桿菌で杖のような形をしていたので、バクテリオン(とても小さい杖)という言葉が採用されたのでしょう
DHFA…何の略か分からない。ジヒドロ葉酸(dihydro folic acid)の略称です。DHFAは、
ジヒドロ葉酸還元酵素によってテトラヒドロ葉酸(THFA)を生成する葉酸誘導体です。
ジヒドロ葉酸は核酸合成に関係し細菌の細胞分裂に影響を与えます。葉酸はの構造は、
プテリジン(ピリミジンとピラジンの結合体)にパラアミノ安息香酸とグルタミン酸が結 合したものです。
独立栄養細菌:葉緑体(シアノバクテリア)との関係。炭酸ガスと水から光エネルギーを利用し、バクテリアクロロフィルを用いて有機物(糖など)を産生する光合成細菌の1つがシアノバクテリアです。シアノバクテリアは、糖とともに酸素も産生します。原始真核細胞がシアノバクテリアを貪食・共生したもの(1次共生)、真核細胞がシアノバクテリアを持つ真核細胞を貪食し・共生したもの(2次共生)がミドリムシ、藻類、植物と分岐し、細胞内に共生したシアノバクテリアが葉緑体として残ったと考えられます。
70Sリボゾーム:リボゾームがメッセンジャーRNAを読み取り、蛋白質を合成をする機能(翻訳機能)を持つことは細菌からヒトまで同様です。しかし、厳密にはリボゾームの構成分子は少しずつ違います。細胞内のリボゾームを回収するとき、壊した細胞成分を超遠心機で比重と分子構造(立体構造:球形かアモルファスか線形かなど)により分離します。軽い成分は上に、重い成分は下に沈みます(沈降する。各成分は独自の沈降係数sedimentation coefficient、Sを持ちます)。細菌のリボゾームは2つの成分(30Sと50S)が結合していて、70Sの沈降係数を持つ分画に沈降します。
熱水孔…何故冷たい海の中に出現したのか。熱水噴出孔は陸上の湖や海水中で見られます。マントルの熱が深海の割れ目から噴出したもの(深海熱水噴出孔)が生物学的に注目されています。深海の熱水噴出孔周辺は、生物活動が活発で、熱水に含まれる各種の化学物質を目当てにした複雑な生態系が成立しています。
パスツールの「白鳥の首フラスコ」実験。アリストテレス以来、長い間「生物が親無しで無生物(物質)から一挙に生まれることがある」とする、自然発生説が主流でした。やがて、肉眼で観察できる生物が自然発生しないことは理解されてきましたが、微生物については証明ができませんでした。パスツールは、加熱殺菌した肉汁の入ったフラスコの口を細長く伸ばし、S字状に曲げてやりました(所謂、白鳥の首フラスコ)。これによって空気の出入りは可能ですが、微生物はフラスコの中まで入り込めない状況を作りだしました。フラスコの中の肉汁には、1年間静置しても、微生物は湧きませんでした。これによって、微生物の自然発生が否定されました(枯草菌の芽胞による反論実験もありました。調べてみると面白いですよ)。
秦佐八郎:ドイツ人のポール・エールリッヒとともにサルバルサン(Salvarsan、最初の抗菌薬)を開発しました。サルバルサンは有機ヒ素化合物で、スピロヘータ感染症(梅毒:スピロヘータの1種である梅毒
付属線毛→付属線毛の働きはなんですか。すみません付属線毛は付着線毛の間違いです。スライドなおしました。線毛には沢山の種類がありますが、主なものは性線毛と付着線毛です。付着線毛は宿主への細菌の吸着などに働き、性線毛は遺伝子の組み換え、プラスミドの挿入などに利用されます。
ペスト菌:ペスト菌(Yersinia pestis)の祖先は、野生動物などが持っていて水系感染を起こす仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)に2種類のプラスミドが入り、血液の中で増殖できるようになった菌と考えられています(私のHP, https://www.ayyoshi.comの「ペスト」に詳しく載っています。米国で問題となるプレーリードッグとの関連も別に書いてあります、http://www.hdkkk.net/topics/pest01.html)。
βラクタム:そもそもどのような物質なのか。ラクタム(lactam)は、カルボキシル基とアミノ基が脱水縮合した形(CONR)を持って環を成している化合物の総称です。四員環のラクタム(環状アミド)です。炭素3つと窒素原子が4角形(4員環)を作っています。窒素がカルボニルのβ炭素に結合しているためこの名で呼ばれています。
ポルフィリン誘導体、ポルフィリン環。ポルフィリンは窒素(N)を1つ含む五角形の5員環のピロール(C5H4N)が、さらに4個つながり、環状になった高分子です。中央部分には鉄(ヘム、ヘモグロビン)やマグネシウム(クロロフィル、葉緑素)、コバルト(シアノコバラミン、ビタミンB12)などが入ります。ポルフィリンの誘導体はヘモグロビン,チトクローム,クロロフィルなどの形で広く動物や植物中に存在します。
マイコプラズマ:真正細菌の中では最も小型の細菌群(テクネキューテス門)です。特徴は細胞壁の遺伝子が欠損したために細胞壁をもたない唯一の真正細菌です。TCA回路、脂質合成系、アミノ酸合成経路も欠損しているので、多くは合成培地で培養できません。肺炎や関節炎などを起こします。
ムレイン:細胞壁の項目に書いてあったが、よく分からない。細胞壁は動物細胞にはないのであまりなじみがありませんが、生物種によってその組成が異なります。細菌の多くはペプチドグリカン(アミノ酸と糖)で細胞壁を合成しており、ムレインと呼ばれています。Mureinの語源は、ギリシャ語のmurus(壁)の意味です。
リケッチア:どのような生物か?生物の分類は?リケッチアは真正細菌のプロテオ菌門、αプロテオ菌綱のグループに属する病原性の高い細菌です。節足動物(ダニ)によって運ばれ、ヒトでは高熱と発疹を特徴とする徴候を示します。ツツガムシ病や日本紅斑熱の原因菌です。
リケッチア、共生との関連は?:多くの細菌は体内に入ってもマクロファージのような貪食細胞に取り込まれ消化されてしまいます。リケッチアは真正細菌のプロテオ菌門、αプロテオ菌綱のグループに属する病原性の高い細菌です。貪食されても消化されず細胞内で生き残る偏性細胞内寄生細菌(ミトコンドリアのように共生しやすい細菌)です。
レーウェンフックの顕微鏡の構造は?倍率は?レーウェンフックが微生物を世界で始めて観察した顕微鏡は簡単な単眼レンズです。針の上に観察するものを乗せ、レンズを挟んだ金属の板の反対側からのぞきます。インターネットに実際に見た映像が載っていますよ。分解能は1.35μmから4μm。8個の顕微鏡のうち5個が100倍以上、最高の倍率は266倍です。http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005300450_00000
リケッチアの細胞寄生機構は?リケッチアはクラミジア(リケッチアと同様に偏性細胞内寄生菌)とは異なり、エネルギー産生系をはじめ増殖に必要な機構を全て備えています。このためリケッチアが偏性細胞寄生性である理由はまだ完全には判っていません。リケッチアの細胞膜は、他の生物の細胞膜とは大きく異なっており、さまざまな成分の透過性が極めて高く、感染した細胞内で宿主の細胞質からリケッチア内部に各種栄養が到達しやすいことがあります。
緑色光合成細菌:緑色光合成細菌は、緑褐色を呈し、光合成する緑色硫黄細菌(嫌気性で硫黄化合物を電子供与体とする光独立栄養菌)と繊維状非酸素発生型光合成細菌(緑色非硫黄細菌ともいい光従属栄養または好気呼吸で生育します)の総称です。
第1回は、生命の誕生と原核生物(真正細菌、古細菌)の世界です。20億年をかけてどのように細菌が進化と多様性を確立したか?また、細菌の多様性が生み出された機序、その結果が地球に与えた影響、あるいは呼吸、代謝、運動、性といった生物の基本要素がすでに細菌の時代に確立されたことを理解してください。後で、感覚器の原基(光受容)もすでにあったということになります。
太陽と地球は、ほぼ同時期、約46億年前に誕生したと考えられています。45億年前には海ができ、原始生命は約40億年前に誕生したと思われます。最初の生命体は原核生物(細菌)です。地球上に存在する無機物を代謝し、エネルギーを生産する化学合成独立栄養細菌でした。約38億年前には真正細菌から古細菌が分岐しました。生物界では真正細菌と古細菌はもネラ界を形成しています。
2017年にカナダのケベック州北部で、最大約43億年前の微生物と思われるものの化石が見つかりました。これまでの最も古い微生物の化石と思われるものは、オーストラリアのエイペクス・チャートの化石でした(約35億年まえ)。46億年前に地球が誕生し、40億年前に生命が発生したといわれています。今回の化石は37億7千万年~42億8千万年前と考えられているので、正しいことが検証されれば、これまでの仮説が現実のものになるということでしょう。
細菌を最初に記載したのはオランダ人のレーウェンフックです(17世紀)。桿菌、球菌、螺旋菌や運動する細菌をスケッチしています。細菌をバクテリウム(ギリシャ語の小さな杖)と命名したのはエーレンベルクです(19世紀前半)。19世紀後半、当時考えられていたように細菌が空中の無から生まれるのではないことを証明したのは、フランスのパスツールです(有名な白鳥の首フラスコを用いた実験)。また微生物が感染症の原因であることを明らかにしたのはドイツ人のロバート・コッホです。最初の細菌治療薬(サルバルサン)を開発したのは、20世紀にはいってからです。ドイツ人のエールリッヒと秦佐八郎でした。抗生物質(ペニシリン)の発見はフレミングによりなされました。
細菌は、現在では29門に分かれています。40億年前から約20億年間(真核生物が出現するまで)は、地球上には細菌しか存在しませんでした。細菌は環境に合わせて多様な進化を遂げてきました。最初は化学合成の独立栄養細菌群が現れ、次いで独立栄養菌が生産する有機物を栄養源とする嫌気性従属栄養細菌群が繁栄しました。利用できる地球上のエネルギー源が減少し始めた時、太陽エネルギーを利用する光合成細菌(独立栄養細菌群)が出現しました。その中に、太陽エネルギーを利用して炭酸ガスと水から酸素と糖を合成する細菌が出現し、大気中の酸素濃度が上昇し、従属栄養の好気性細菌群が増殖するようになりました。
古細菌は、最初真正細菌よりも古いと考えられましたが、ゲノム解析等の結果から、真正細菌から分岐した群で、真正細菌よりも真核生物に近い存在です。しかし、現在の地球での生息分布は、塩湖、源泉、強酸、強アルカリのような極限状態の領域に追いやられています。また、メタン合成や高熱菌、石油生産に関連すると思われるものなどがあります。病原細菌としては、ほとんど知られているものはありません。
原始生物(細菌群)が自然栄養源を食べつくす前に、新しい栄養源を作りだした生物が嫌気性光合成細菌です。太陽のエネルギーを利用して有機物を産生する独立栄養細菌が生まれ、その後好気性の独立栄養細菌が光合成により酸素と糖を作り出すようになり、大気中の酸素を含め、地球の環境が大きく変わっていきます。
好気性光合成細菌(シアノバクテリア)は、真核生物では葉緑体に、αプロテオ菌はミトコンドリアとして、真核生物細胞の主要な細胞内小器官になっていきます。
細菌同士の食物連鎖の中で、相手に打ち勝つ武器として発達したのが、抗生物質です。現在では、抗生物質として、細菌のDNA合成(ゲノムの複製)阻害、転写(DNAからRNAの合成)阻害、蛋白合成(リボゾームでの翻訳)阻害、代謝阻害、細胞膜障害、細胞壁合成阻害など様々な種類の医薬品が開発されています。しかし、抗菌剤を使用するとともに薬剤耐性菌が選択されてきます。これらは、もともと細菌群が矛と盾の関係として持っている遺伝子群と考えられます。適正な抗生剤の使用をしない限り、耐性菌が選択されたり、耐性遺伝子がプラスミドや性交による遺伝子組み換えで、他の細菌に移っていくことになります。
最後に、細菌の構造、代謝(呼吸)、運動性、性についてまとめておきます。
鞭毛は細菌運動、移動の原点です。鞭毛は我々の精子に至るまで、細胞の運動を担っています。繊毛はやがて移動や異物などを排除する機能も持ちますが、細菌の線毛は標的細胞にくっついて縮みながら接近したり、遺伝子交換のためのパイプ役を果たします。
細菌の時からすでに性に相当する因子を獲得し、より新しい環境に適応するため、遺伝子交換(受精?)により、生物は多様性を獲得していきます。
第2回の質問回答集
アメーバ赤痢(Entamoeba histolytica)の徴候:赤痢アメーバの栄養型原虫(trophozoite)は、腸粘膜に侵入し、大腸粘膜面に潰瘍性病変を形成します。その結果、粘血便を主体とする赤痢アメ−バ性大腸炎を発症させます。一部の例では腸から、さらに肝臓に侵入することがあります。大腸炎症例のうち5%ほどは、大腸外でも病気をおこします。その大部分は肝膿瘍ですが、まれに心嚢、肺、脳、皮膚などの赤痢アメ−バ症も報告されています。
栄養体:具体的にどの部分でどのような働きをするのか?栄養体は組織や器官ではありません(trophozoite:tropho栄養、zoite 体、動物、原虫)。栄養素を摂取し、成長し、生活する原生動物の1つの状態(ステージ)を指すものです。日本語訳が良くないですね?
オピストコンタとはなんですか。後方鞭毛生物(Opisthokonta)は真核生物の主要な系統
の1つです。動物(後生動物)と真菌、数グループの原生生物を含みます。精子や胞子などが opistho-(後方)にkontos(鞭毛)を持つ生物で5界の上の上界による分類です。
仮足:用途は移動のみなのか。原生動物の移動様式の1つです(ほかに繊毛、鞭毛がある)。
このような仮足による運動をアメーバ運動といいます。このとき細胞の運動方向を決定するものを主仮足、それ以外のものを副仮足といいます。仮足には葉状、粘液状、糸状、網状仮足などがあります。仮足は時に異物を包んで、取り込む貪食作用を担うこともあります。
キネトプラスト…何の役に立つのかが分からない。キネトプラストはトリパノソーマのような原虫(鞭毛虫のうち、より発達したキネトプラスト類)が持っています。これらの原生動物は、多くのミトコンドリアDNAのコピーを含む、巨大なミトコンドリアを持っています。このミトコンドリアDNAの凝集体がキネトプラストです。キネトプラスト類が巨大なミトコンドリアを持つのは、鞭毛運動に多くのエネルギーを必要とするからだと考えられます。キネトプラスト(ミトコンドリアDNAが凝集した円盤)は鞭毛の起始部に連なる形で存在していますが、その役割は明らかではありません。
キノンはどのようなものか?キノン (quinone) は、一般的にはベンゼン環から誘導されます。ベンゼン環に2つのケトン(=O)構造がついた環状の有機化合物の総称です。19世紀のスペイン語のキナ(quina,
quinine)に英語の接尾語ーoneが付いたものです。キナノキ属のキナは南米産のマラリアの特効薬キニーネをとる植物です。キニーネにはキノリンが含まれています。キノリンは2つのベンゼン環(ナフタレン)に窒素Nが入った構造です。これにカルボニル基が付くとキノロンとなり、細菌のDNA合成阻害の抗生物質になります。ピぺリジンにメタノールとメトキシ・キノリンが結合したものがキニーネです。
クレン古細菌:クレンアーキオータ(Crenarchaeota/Crenarchaea、クレンは泉の意味)は、古細菌のうち好熱菌を中心としたグループで、真正細菌や他の古細菌に比べ、比較的真核細胞と共通点が多い。このグループの中のイグニコックス(Ignicoccus,イグニは炎の意味)は、古細菌の細胞表面構造であるシュードムレイン、多糖類のような硬い殻は持っておらず、菌体の最外部には外細胞膜がある。外細胞膜表面にはATP合成酵素や、アセチルCoA合成酵素、水素-硫黄オキシド還元酵素複合体などが局在している一方、DNAやタンパク質合成系などは内膜の内側に存在しており、情報処理系とエネルギー生産系が別の場所に分けられている。この構造は細胞膜と核膜を持つ真核生物に通じる。I. hospitalisの祖先とN. equitansの祖先の共生系がα-プロテオバクテリアを取り込み、真核生物になったという仮説が出たこともある。
ゲノム…遺伝子、染色体と何が違うのか分からない。遺伝子は個々の遺伝情報を持つ単位。
染色体はM期に見られるDNAとヒストンの複合体、ゲノムは全遺伝情報を含む全染
色体の1セット。個々の遺伝子とジャンク配列を持つ染色体のすべてがそろったセ
ット(人なら22本の常染色体と1本の性染色体)をゲノムといいます。
嫌気…好気と何が違うのか分からない。エネルギー生産(代謝)において、電子受容体として酸素を利用するものが好気性生物、酸素以外のものを電子受容体とするものが嫌気性生物です。
原生生物でミトコンドリアを消した生物は、なぜ消したのか?嫌気呼吸にシフトしたのが原因の一つと思われます。ジアルジアや赤痢アメーバはミトコンドリアを持っていませんが、遺伝子は核に残っています。嫌気環境に適応した生物では酸素呼吸をはじめ,さまざまな代謝機能を失い,細胞小器官ゲノムも縮小・消失しています。プロトンを電子受容体としてH2をつくりながらATPをつくるヒドロゲノソームとよばれるMRO(ミトコンドリア関連オルガネラ(mitochondrion-related organelle)をもつ膣トリコモナス原虫や高度に縮退したマイトソームとよばれるMROをもつ赤痢アメーバ・ジアルジアが代表的な嫌気寄生原虫です。こういった退行進化したミトコンドリアは真核生物の系統樹のなかでさまざまな系譜にみられます。
原虫のゲノム:細菌からヒトまでそれぞれのゲノムを持っています。原虫も自分自身を再生産するための全情報(ゲノム)をもっています。テキストで示したかったのは鞭毛虫、アメーバー、アピコンプレックス群、繊毛虫の分岐過程と、ゲノム、細胞機能・構造がどのようになっているかをしめしたかったのです。
原虫の無性生殖と有性生殖:どのような違いがあるのか?無性生殖は自分と全く同じコピーと作るクローン増殖です。有性生殖は雌雄が合体し、遺伝子を組み換え、親と違う遺伝構成の子孫ができます。
原虫が有性生殖をおこなう環境は?有性生殖が子孫の多様性に有利であることは明らかですが、単細胞の原生動物のあるものが、どのような環境誘導で雌雄化するのかはわかっていません。Natureにマラリア原虫が有性生殖に入るために蚊の中で無性生殖型の集団の一部が分化して配偶子母細胞と呼ばれる有性生殖段階になる必要がこと、この過程は転写調節因子AP2-Gによって制御されること、他のAP2転写因子群、ヒストン修飾酵素群、ヌクレオソームポジショニングの調節因子群が変化することが報告されています。
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/89873
後生動物。多細胞動物であり,単なる細胞の集合体ではなく,胚葉や組織の分化が種々の器官の形成に役立っていて,高等な体制を保持している生物群。五界説の動物界(真正後生動物)に等しい生物分類。広い意味では、生物の分類群の1つで、真核生物のオピストコンタ(後方鞭毛生物;opistho-後ろ、kontos鞭毛)上界に属します。精子の鞭毛が1つで後ろについているもの。海綿動物、中生動物、節足動物、脊索動物(脊椎動物を含む)などを含みます。オピストコンタ(上界)でないものはバイコンタ上界(五界の上の分類)になります。
シスト化:どのようなものなのか?シストとは袋、嚢胞という意味で、生物ではいろいろな場面で使われます。例えば、腎臓や肝臓にできる嚢胞もシストと呼びます。原虫や寄生虫では宿主の体外に出た時に袋で身を守るためにシストを形成する場合があります。シストの中に卵を入れているものはオオシスト(接合子嚢)と呼びます。シスト化と被嚢化、被嚢形成(シスト形成)は、ほぼ同義です。
シスト:バランチジウム症の感染の際にシストの経口摂取とあったが具体的にはどのよう
なものなのか。卵や子虫が体外に排出されるときに環境から守られるように袋(子嚢、シ
スト)に入ることがあります。シストは経口摂取されたときに胃酸から卵や子虫を守ったり、トキソプラズマのように感染子虫がシストに入って免疫系から逃れることがあります。
シゾント→シゾントで核だけを大量に合成して一気に分裂することの利点はなんですか。
ウイルスと同様に分業できます。ゲノムだけ複製しておいて一気に組み立てるほうが、
2分裂でゲノムを複製し、個々に細胞質物質を合成し、等分に分かれることを繰り返すよりも簡単でしょう。
食胞:どのような役割があるのか?貪食と関係しますが、貪食作用で取り込んだ異物は、マクロファージでは、細胞内を移動してリソゾーム(融解酵素を含む小胞)と融合し、そこで異物を分解し再利用します。単細胞動物では、この機能を持つのが食胞で異物を取り込み、細胞内で酵素処理して分解し、消化・吸収したのち、不要物を細胞外に捨て、膜融合をして消失する細胞内小器官です。
生殖母体:具体的にどのような働きをするのか?原生動物の中には、マラリア原虫のように有性生殖をするものがあります。有性生殖のため配偶子(精子と卵子)を形成する過程をガメトゴニ―といいます(gamete: 配偶子、gonium:生成する、合成する)。ガメトゴニ―を行う細胞を生殖母体、ガモント(gamont)またはガメトサイト(gametocyte)といい、生じる配偶子は生殖体、ガメート(gamete)といいます。
赤痢アメーバ→赤痢アメーバは口などから侵入すると胃を通るのに強酸である胃酸で死
滅せずに小腸や大腸まで進行できるのはどうしてですか。いい質問です。赤痢アメーバは
成体(栄養体、トロフォゾイド)のまま胃を通過するのではありません。シスト(子嚢、
卵殻のようなもの)に守られていて、直接、胃酸に触れることを避けています。小腸に達
してからシストの外に出て、栄養体として増殖を始めます。
Zリング:Zリングは遺伝子ftsZ でコードされた蛋白質からなる。真正細菌やユーリ古細菌などに存在し、細胞分裂時に細胞膜下に集合して環構造(リング)を形成し、その箇所が分裂時に収縮して隔壁となり、細胞がちぎれて2つになる。ミトコンドリアの分裂時にも形成される。
藻類:酸素発生する光合成を行う生物のうち、地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものの総称です。そのため、通常の植物は含みません。シアノバクテリア(藍藻)から、真核生物で単細胞の原生生物(珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻など)及び多細胞生物の海藻類(紅藻、褐藻、緑藻)など、進化的に全く異なるグループを含みます。酸素非発生の光合成菌は藻類には入りません。
大腸バランチジウム…生物なのか臓器なのかが分からない。大腸炎を起こす原虫で繊毛虫
門に分類されます。
立襟鞭毛虫→立襟鞭毛虫が鞭毛を持つのに襟と糸状仮足を持つのはどうしてですか。鞭毛
は運動や水流をおこし細菌などの餌を集めるのに使います。襟の形に見える部分では、
餌を捕食します。糸状仮足は、アメーバの仮足のような膜状でなく、基部は幅広く先に
向かって細い糸状となり、先端が尖っています。鞭毛虫の運動や環境センサーなどの役
割を果たしている可能性があります。
チトクロームC→チトクロームCはミトコンドリア内でどのような働きをしていますか。
ミトコンドリアの内膜に弱く結合しているヘムタンパク質(鉄を中核に持つ蛋白)の一
種で、電子伝達系(電子の受け渡し)において主要な役割を果たします。
シトクロム(チトクローム):cytochrome(細胞質内にある色のついた蛋白の意味)。酸化還元機能を持つヘム鉄を含有するヘムタンパク質の一種です。電子伝達系として好気呼吸に重要な役割を果たしています。
頂端複合構造:おもな働きはどのようなものか?頂端複合構造は、アピコンプレックス群の原生動物にみられる共通の構造で、細胞の一端に見出される分泌性の小器官の複合体です。ミクロネーム、ロフトリー、微小管からなるポーラーリング、およびある原生動物種ではコノイドも含みます。これらの細胞小器官は、原虫と宿主の相互作用に利用され、宿主細胞に入ることを可能にする酵素および細胞外物質を融解する蛋白質などを分泌します、
ツェツェバエ。ハエ目、ツェツェバエ科の吸血昆虫。吸血性で、アフリカトリパノソーマ症
(ヒトのアフリカ睡眠病・家畜のナガナ病)の病原体となるトリパノソーマ(ガンビアトリパノソーマやローデシアトリパノソーマ)などを媒介します。
ドメインシャッンフリング:高分子蛋白質の構造は、それぞれの機能を持ったユニット(ドメイン)が組み合わさって出来ている。各ドメインは本来別々の遺伝子によりコードされたユニットであり、動物種によって、高分子蛋白質のドメインの繰り返しや配置が異なっている。進化の過程でドメインがバラバラに組み合わされることを、トランプのカードの混ぜ合わせになぞらえて、ドメインシャッフリングと呼んでいる。系統樹を追うのにも有効である。
トリパノソーマ、キネトプラスト。キネトプラストはトリパノソーマのような原虫(鞭毛虫のうち、ランブル鞭毛虫のようなトリコゾア亜門に比べ、より発達したキネトプラスト類)が持っています。これらの原生動物は、多くのミトコンドリアDNAのコピーを含む、巨大な一個のミトコンドリアを持っています。このミトコンドリアDNAの凝集体がキネトプラストです。キネトプラスト類が巨大なミトコンドリアを持つのは、鞭毛運動に多くのエネルギーを必要とするからだと考えられます。キネトプラスト(ミトコンドリアDNAが凝集した円盤)は鞭毛の起始部に連なる形で存在していますが、その役割は明らかではありません。
貪食:どのような状態を指すのか?細胞が異物に接したとき、細胞膜が陥入して異物を囲い込み、細胞膜で包んだまま取り込む状態を貪食といいます。単細胞動物からヒトの単球(モノサイト、マクロファージ)も同様の機能を持っています。
2次共生→2次共生を行うことの利点はなんですか。単細胞の真核生物が別の単細胞真核
生物を取り込んで共生する(消化してしまわない)ので、時に両方の性質を発揮するこ
とができる細胞となります(例ミドリムシは藻類と鞭毛虫の合体)。
二宿主性:血液原虫であるトリパノソーマやリーシュマニアは、単純な人―人感染ではなく、中間宿主または媒介動物として昆虫が必要で、昆虫体内で特定の感染型となり、ヒトに感染します。トリパノソーマは一般に、その生活環において脊椎動物(トリポマステゴート型虫体となる)と無脊椎動物(エピマステゴート型虫体となる)の2種類の宿主を必要とするので、これを二宿主性といいます。
ニューデリー・メタロβラクタマーゼ(NDM1).細胞壁合成阻害を誘導する抗生物質(ペニシリン、セファム系、カルバペネムなど)に耐性(抗生物質を分解する酵素を産生する)となる新しい耐性菌遺伝子。NMD-1遺伝子はプラスミドに乗っているため、大腸菌や肺炎桿菌にも耐性を誘導することが知られています。
ヌクレオモルフとは?ヌクレオモルフはクリプト藻、クロララクニオン藻の細胞小器官です。起源は葉緑体として取り込まれた真核生物の細胞核であると言われています。葉緑体遺伝子による分子系統解析の結果から、クリプト藻では紅藻、クロララクニオン藻では緑藻がその由来と考えられます。光合成能を持った真核生物が食作用によって宿主細胞内に取り込まれ、そのまま細胞内で保持されるうちに細胞小器官が退化し、萎縮した核(と葉緑体としての光合成能)だけが残ったものです。この複雑な細胞内共生の結果、ヌクレオモルフを持つクリプト藻やクロララクニオン藻では、由来を異にする4種類のゲノムが細胞内に存在します。細胞核のゲノム(真核生物)、 ミトコンドリアゲノム(原核生物)、 葉緑体ゲノム(原核生物)。ヌクレオモルフゲノム(真核生物)です。複雑ですね。
嚢子:具体的にどの部分でどのような働きをするのか?卵や子虫が体外に排出されるときに環境から守られるように袋(子嚢、シスト)に入ることがあります。シストは経口摂取されたときに胃酸から卵や子虫を守ったり、トキソプラズマのように感染子虫がシストに入って免疫系から逃れることがあります。卵を入れたシストをオオシスト(oocyst: 接合子嚢、接合子をいれた袋)といいます。
ハテナ:ハテナのようなかわいい名前のついた生物は他にありますか?ユーグレナはミドリムシですが、名前の由来は「美しい眼点:eu-glena」です。緑の体に赤い目のような点が見えるからです。とてもきれいですよ。
被嚢(シストに覆われること)、被嚢体。単細胞生物や下等な多細胞生物に存在する分厚い強固な膜に包まれた休眠体を被嚢体といいます。通常、被嚢の中に多数の胞子・胞子虫などが入っています。一般に被嚢は温度や湿度などの環境条件が悪化するとつくられ、環境がよくなる(寄生体にとっては、宿主防御機能が低下するなど)と被嚢膜(シスト)が破れて胞子虫が放出され増殖が始まります。
フェレドキシン:蛋白分子の内部に鉄-硫黄クラスター (Fe-Sクラスター) を持つ鉄硫黄蛋白質の一つ。電子伝達体(電子受容体・供与体)として機能する。ヘム(ポルフィリン・鉄分子)を含まない非ヘム蛋白質のひとつ。動物から原核生物(細菌)まで広く分布する。光合成、窒素固定、炭酸固定、水素分子の酸化還元など主要な代謝系に用いられる分子です。
偏性嫌気性細菌:酸素に対する嫌気性が片寄っているということです。簡単に言うと酸素が極端に嫌いで、酸素があると死んでしまう(無酸素状態でないと生きられない)細菌群です。例はボツリヌス菌や破傷風菌など。
放射管:ゾウリムシの放射管における働き。ゾウリムシには、通常、前後2個の収縮胞が存在しています。2個の収縮胞は交互に拡張と収縮を繰り返し、背側に開口する排泄孔より液体を外部に排出しています(浸透圧調節のため)。ゾウリムシでは、収縮胞、星形に配列したアンプル状膨大部、そこから細く伸びる放射管で収縮胞複合体が形成されています。収縮胞にたまった水が放射管を通して外部に捨てられ、細胞内の浸透圧を調節しています。 浸透圧の調節ができないと水がどんどん細胞内に入ってきてパンクしてしまします。
ボルボックス(プレオドリナ)の群体の雌雄:群体の中で雌性的な変化をした個体に発現する遺伝子をヒボタン(メスだけに特徴的にみられる5つの遺伝子)と命名、雄性的な変化をした個体に発現する遺伝子(PlestMID遺伝子を含む、オスのみにみられる2つの遺伝子、その後、新たに8つの遺伝子を特定、)をオトコギと命名しました。
マイトソーム:ミトコンドリアとどの辺りが相同なのか?ミトコンドリアと同様に二重膜に包まれています。運ばれてくる蛋白質もミトコンドリアに運ばれる蛋白質と類似しています。しかし、ミトコンドリアと異なる点としては、マイトソームは内部にゲノムを持たないことです。マイトソームの構成遺伝子は細胞核に組み込まれています。
Mbp…何を意味する単位か分からない。核酸は塩基(プリン、ピリミジン)と五炭糖(リボース、デオキシリポース)とリン酸から出来ています。この1セットを、省略して塩基(base)といいます。塩基はA―T, G―Cの塩基対を作っているので、これは塩基対(base pair)といいます。Mbpはメガ塩基対のことです。キロが10の3乗、メガは10の6乗です。ギガは10の9乗といった単位です。1Mbpの生物は、10の6乗塩基対のサイズのゲノムを持つ生物ということになります。ヒトのゲノムサイズは3x10の9乗bpですので、3Gbpになります。
メトロニダゾールは何に有効ですか?ニトロイミダゾール系の抗原虫薬、抗菌薬です。最初はトリコモナス(嫌気性鞭毛虫)感染症治療薬として開発されましたが、嫌気性菌に対する抗菌活性が見出されました。ランブル鞭毛虫、赤痢アメーバ、ヘリコバクター、いろいろな嫌気性菌(クロストリジウム・ディフィシルを含む)に有効です。
有性分裂:無性分裂との違いは何か?有性生殖、無性生殖と混同されますが、増殖様式は通常生殖といいます。分裂は2分裂とか、減数分裂などに用いる言葉で、ふつうは有性、無性と組み合わせては使いません。
有性生殖:扁形動物・線形動物。線虫以上では雌雄の個体が配偶子(精子、卵子)を形成しますが、扁形動物(条虫や吸虫、日本住血吸虫は雌雄別個体)では雌雄同体なので、同一個体が両方の配偶子を形成します。胞子虫のような原生動物では、単細胞なのでガメトゴニ―により雌雄両細胞が形成され受精します。他個体の配偶子やガメートサイトが受精すれば遺伝子組み換え(2倍体では減数分裂時の相同染色体の遺伝子組み換え)等により多様性が生まれます。
ユーリ古細菌。古細菌の8割以上を含むグループ。ユーリアーキア/Euryarchaea、ユリアーキオータ門は、メタン菌や高度好塩菌を中心とした古細菌群。他に超好熱菌や好熱好酸菌、硫酸還元菌、嫌気的メタン酸化菌など多様な古細菌が含まれる。クレン古細菌は古細菌の約2割を占めるグループです。
葉緑体と細胞内共生。独立栄養細菌:葉緑体とシアノバクテリアとの関係で説明しました。
リピド封入体のリピッドとは?:リピド(lipid)は脂質です。
リボゾーム:50S+30Sは、細菌のリボゾームが沈降係数50Sのサブユニット分子(だるまさんの体の部分)と30Sのサブユニット分子(だるまさんの頭の部分)から出来ているという意味です。真核細胞のリボゾームは40Sと60Sのサブユニットから出来ています。
第2回は、単細胞性真核生物(原生生物)の話です。真核生物と原核生物の違い、真核生物はどのようにしてできたか?1次共生と2次共生、特にミトコンドリアと葉緑体の起源は興味深いものです。原生生物の進化と多様性はとても面白いです。また、医学や獣医学の病原微生物にも深く関連します。単細胞生物の持つ細胞内器官はその後の、多細胞生物の臓器の原型です。最後に、単細胞生物から多細胞生物への橋わたしについて説明します。
第1回、第2回の講義の宿題をやってください。
真核細胞がどのようにしてできたかは、まだ解明されていません。しかし真核細胞と真正細菌および古細菌の構成成分、代謝、構造・機能などを比較すると、古細菌と真核細胞の共通性が高く、細胞壁がない古細菌が真正細菌のαプロテオ菌(ミトコンドリア)を貪食し、高エネルギー産生系を用いて細胞を拡大し、貪食能を利用して必要な細胞内小器官を作った(1次共生)、真核細胞がシアノバクテリア(葉緑体)を持つ他の真核細胞を貪食し共生する(2次共生)過程などをたどって複雑化したと考えられます。古細菌の中でもクレン古細菌のグループがその役割を担った可能性があります。最も原核細胞から真核細胞の出現までの20億年の長い期間には、真核細胞に至る様々な組み合わせが試みられたでしょう。しかし、我々は現存する真核細胞からしか情報を得ることができません。別の過程があった可能性は否定できません。
原生生物は生物学的にはグループとして積極的な定義があるわけではありません。五界説では原核生物(細菌)と真核生物に分け、真核生物のうち多細胞の動物、植物、真菌類を分け、その他の生物を原生生物としました。分類できるものの残りの生物ということになります。単細胞の真核生物がこのグループの多くの種の特徴になります。そのうちミトコンドリアだけを持ち従属栄養の生物が原生動物、葉緑体とミトコンドリアを持つものが藻類となりますが、原生動物と藻類が共生した原生生物(ミドリムシ、ハテナなど)もいます。
原生動物のうちには、環境中で自由に生活を送るものと宿主に寄生するものがあります。寄生性を持つもので病原性を示すものが原虫になります。原生動物も原虫もprotozoaといいます。そのためしばしば混乱を起こします。原生生物は生物学的な分類、原虫は医学的な分類といえます。
原生動物の分岐は、トリコモナス、ジアルジアのような単純な鞭毛虫、トリパノソーマやリーシュマニアのような複雑な鞭毛虫、根足類のアメーバ(赤痢アメーバなど)、マラリアやコクシジウムのような胞子虫類のアピコンプレックス群、そして繊毛虫の順で分岐してきたと考えられます。
分類学的には①トリコゾア亜門、②キネトプラスト門、③アメーバ動物門、④アピコンプレックス門、⑤繊毛虫類の順になります。しかし、これらの分類は主に形態、運動能、寄生宿主や病原性などを加味して分類されている側面があり、ゲノムの解析が進むと分類が変わる可能性があります。
一般に、同じグループに属しても自由生活を行う原生動物は構造が複雑で細胞内小器官もよく発達している傾向があります。他方、寄生性の原生動物は単純化する傾向があります。この退行性進化というべき特性は多くの寄生虫に見られる変化です。10億年に及ぶ環境適応が、それぞれの原生動物の形態・機能・構造に大きな影響を及ぼしており、現存する原生動物が分岐した時の状態のままでいるわけではないので、しばしば混乱が起きます。
ミトコンドリアを持たない原生動物を古原生動物(アーケプロトゾア)として、真核生物の起源とした考えもありましたが、これらの生物はミトコンドリアを持っていたが、進化の過程でミトコンドリアゲノムが細胞核に移動し、マイトソームのような細胞内小器官に変化したものであることが分かりました。
ヒトを含め哺乳類は自分で合成できない必須アミノ酸があります。必須アミノ酸は魚類でもあります。魚類でもほぼ同一のアミノ酸合成ができません。必須アミノ酸が合成できない理由は、必須アミノ酸の炭素骨格によります。全てのアミノ酸を合成できる原核細胞(細菌)で見ても、必須アミノ酸の合成は、非必須アミノ酸に比べて、非常に長いステップが必要となります。従属栄養性の動物では進化の過程で、この合成系を失っても食物連鎖で補充が可能です。
原核生物、真菌類、植物はすべてのアミノ酸合成能を持つのに対して、ヒトを含むすべての動物と原生生物(真核単細胞)の細胞性粘菌には必須アミノ酸(合成できないアミノ酸)があります。必須アミノ酸は、動物種に係わらずほとんど同じです。原生生物の進化のある時に、ほぼ10種類のアミノ酸合成能を一斉に失ったように見えます。(ゲノムからも明らか、炭素骨格の合成酵素を欠損しました)。どの過程で能力を失ったか、その原因は何か?は不明です。
しかし、進化の分岐からすると、多細胞生物の祖先である襟鞭毛虫は、全アミノ酸合成能を持っています。他方、環境アメーバは、全アミノ酸を合成できず、必須アミノ酸があります。それなのに、2胚葉性の刺胞動物(サンゴ)も、全アミノ酸を合成できるようですが、3胚葉の土壌線虫は必須アミノ酸を持つ(甲殻類、節足動物の祖先)という矛盾が見られます。進化のいろいろな時点で、別々に必須アミノ酸(合成系の欠損)が生じたということかと思います。
第3回は、いよいよ多細胞生物です。比較的早く分岐した単純な従属栄養系の多細胞生物としては、真菌類と3胚葉動物としては扁形動物門(条虫、吸虫)、線形動物門(回虫)があります。扁形動物門からは軟体動物が、線形動物門からは甲殻類、昆虫などが分岐していきますが、それは次回に譲るとして、今回は真菌類と扁形・線形動物について講義します。
第3回と4回の講義内容について、わからなかった単語を報告してくれた生徒さん、有難うございました。全員に応えられたかわかりませんが、メールで送ってくれた質問には回答が済みました。まだまだあるかもしれませんが、一応ここまででまとめておきます。第3回と4回のスライドを見るときの参考にしてください。2018年5月19日。
第3回 分からなかった単語
アルペオラータとストラメノバイルの違い:どちらも、門を超える大きなグループです。ア
ルべオラータは、原生動物のグループで、細胞表層にアルベオール(泡室、alveole)を
持っています。これは細胞膜を裏打ちするような層を作っている平らな小胞で、普通は
柔軟な外被 (pellicle) を作っています。アルベオラータグループのミトコンドリアには管状のクリステがあります。他方、ストラメノパイル (Stramenopiles) は、鞭毛に中空の小毛を持つ真核生物の一群です。前鞭毛と後鞭毛の二本の鞭毛を持っています。藻類のオクロ植物(不等毛植物)、原生動物の太陽虫の仲間の一部や、卵菌・サカゲツボカビ類までを含む多様なグループです。
オンコセルカ症の治療の方法はあるのか?オンコセルカ症は、回旋糸状虫という線虫の一種による感染症です。かゆみ、発疹、ときに瘢痕が生じ、失明につながる眼の症状が引き起こされることもあります。駆虫薬のイベルメクチンが有効です。1回投与し、症状がなくなるまで6~12カ月毎に反復投与します。線虫が駆除されれば治療は終わりです。
海綿はどうやって生きているのですか?濾過摂食です。体内を通り抜ける水の中から有機
物微粒子や微生物を捕らえて栄養源とします。深海などには肉食性カイメンが生息し、
小型甲殻類などを捕らえて食べています。
下等真菌と高等真菌の違い:便宜上、無性生殖のみか?有性生殖も行うか?菌糸の細胞に隔
壁があるか、隔壁がないかで分けています。
カマドウマって?:見たことありませんか?結構身近にいます。バッタ目の昆虫です。キリ
ギリスやコオロギ、ウマオイに似ていますが、成虫でも翅(はね)をもたず専ら長い後脚で跳躍します。その跳躍力は非常に強い。姿や体色、飛び跳ねるさまが馬を連想させ、古い日本家屋では竈(かまど)の周辺などによく見られたことからこの名前が付いています
寄生虫→特にどのようなところを好むのか?寄生虫により、また、寄生虫のステージにより異なります。経口感染するものの多くは消化管に寄生します。一部は門脈から脾臓や肝臓に入って寄生します。吸血昆虫(ベクター)によって運ばれるものは、直接血液に入って、肝臓や肺などに行きます。全身を循環して脳や目、筋肉に行くものもあります。多くはありませんが皮膚から入って動き回るもの、鼻から入って脳に行くもの等もあります。
寄生虫→幼虫がヒトに入るとなぜ成虫にならないのか?寄生虫には成虫になって卵を産む
ことができる宿主(終宿主)と、幼虫時代に寄生する宿主(中間宿主)があります。ヒトを終宿主とする寄生虫は、ヒトに感染すると成虫になります。ヒトを中間宿主とする寄生虫や、たまたま幼虫期にヒトに感染した寄生虫は成虫になれません。
クリプトコッカス→鳥では体温が高いため増殖しないという説明でしたが、人の体も菌に感染すると免疫系が働き、体温が上がると思うのですが、それでも死滅せずに脳膜炎を発症させるのはどうしてですか。そういわれると不思議ですが・・・。クリプトコックスは39℃で死滅するわけではありません。①鳥の体温では、比較的増えにくいが、哺乳動物の体温では、それより増えやすいということです。②鳥の体から出たクリプトコックスは糞中のクレアチニンを利用して大量に増殖するので、ヒトや猫は大量汚染を受ける可能性がある。③クリプトコックスに暴露されれば、いつも髄膜炎になるわけではありません。基本的には日和見感染です。免疫系等に問題のある人が発症しやすい傾向があります。
子実体:どういうものか。真菌類が胞子形成のために作る、複雑な形を持つ複合的な構造物
のこと(fruiting body)。肉眼的には、大型のものを中心に、いわゆるキノコと呼ばれて
いる。接合菌の接合嚢(fruiting body of zygomycota)、子嚢菌の子嚢(fruiting body of ascomycota)、担子菌のキノコ(fruiting body of basomycota)がこれにあたる。
刺胞動物と棘皮動物の違い:刺胞動物は2胚葉性でクラゲ、ヒドラ、イソギンチャクなど、
棘皮動物は3胚葉性で脊索動物に近い動物群です。ウニ、ヒトデ、クモヒトデ、ナマ
コ、ウミユリなどが棘皮動物に属します。
宿主間を移動できない場合、寄生虫は死んでしまうのか。寄生した宿主が終宿主であれば、その個体は死にますが、卵を産んで次世代を残すことができます。中間宿主の場合は、成熟して次世代を残せないので、免疫応答などで排除される(死ぬ)か、どんなに頑張っても、宿主が死ぬときには宿主とともに死ぬことになります。
終宿主:無鉤条虫はヒトが終宿主とあるが、ヒトの中で一生寄生するということなのか?
そうではありません。ヒトが終宿主というのは、ヒトの体内で成体となって卵を産む
ことができるということです。中間宿主の牛では嚢虫という幼虫の段階で寄生しています。汚染した牛肉をヒトが食べると、ヒトの体内で初めて、成虫となり卵を産むという生活環です。
真菌→123属914種の属は種とどうちがうのか?生物の分類は界(動物界、植物界、モ
ネラ界など)、門(プロテオ細菌門、繊毛虫門、子嚢菌門など)、綱(バチルス綱、哺
乳動物綱、甲殻綱など)、目(霊長目、十脚目、ウナギ目など)、科(ヒト科、腸内細菌科、マイコプラズマ科など)、属(エルシニア属、リケッチア属、マカカ属など)、種(ペスト菌、日本紅斑熱リケッチア、ニホンザルなど)のように、大きな分類から小さな分類まで分かれています。すべての生き物は種で1対1に決まります(属では多数の種が含まれます)が、通常は属と種で表わします(ホモサピエンス・サピエンス、エルシニア・ペスト、リケッチア・ツツガムシなど)。例えば今治キャンパスを示すのに、アジア(界)、日本国(門)、中四国圏(綱)、愛媛県(目)、今治市(科)、いこいの丘(属)、1の3番地(種)のようなものです。いこいの丘・1-3(属・種)で獣医学部とわかりますが、分類上(各カテゴリーで共通性をもったもの)はそれぞれのレベルでまとめられます。上の真菌の例は1つの科に123のグループ(属)があり、その中に914種の真菌が分類されている(平均1属あたり9種の真菌を含んでいる)ということです。いこいの丘にも獣医学部以外に別の建物があって、1-5と1-7などがあるでしょう?
真菌→動物は食べるが真菌類は溶かして吸収するのは、動物の方が大きいのに摂取方法が
逆じゃないのはどうしてですか。ここでいう異物の摂取の方法は体の大きさのことで
はありません。細胞一つずつの大きさは、むしろ単細胞生物のほうが大きいです。動物細胞では餌をとる場合に、貪食のように細胞膜に包んで取り込む方法と、細胞外に酵素を出して溶かし、吸収する方法があります。ヒトの細胞でも貪食する場合もあるし、蛋白分解酵素や脂肪分解酵素を出して、分解して吸収する方法も使うので、貪食は動物、融解は真菌類というのは、絶対的ではなく、そういう傾向があるという程度です。多細胞生物の高等動物が器官として消化器系を持ち、ものを食べるのに、植物や真菌類が食べないのは、単に消化器系を発達させなかったためです。
真菌類が植物との関係が深く、細菌のように動物寄生をあまりしないのはなぜか?動物と
植物が陸上に上がった時に、真菌類は土壌菌として植物について行ったものが多く、動物には真正細菌が、口腔や腸内細菌、皮膚の常在菌としてついて行ったものが多かったのではないでしょうか?また、真菌類にはセルロースを分解する能力を持ったものがいることも影響しているかもしれません。
生活環:どういう意味か。わかりません。寄生虫が卵から孵化して、中間宿主(一つだけではなく、第二中間宿主を持つものもあります)を経由して終宿主にたどり着き、成体となって、また卵を産むサイクルを寄生虫の生活環(life cycle)といいます。終宿主がヒトであても、中間宿主が、他の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類、昆虫(節足動物)など様々です。食物連鎖を利用して生活環を形成する寄生虫は、複雑な経緯をたどります。しかし、そのことで生息域を広げたり、感染効率を上げたり、多様性を獲得したりしています。
線虫はどのくらいの大きさですか?生物実験に使われる線虫のC. elegasは雌雄同体です。
成虫の体長は1~1.5mmです。食中毒のアニサキス(海棲哺乳類の回虫)は2~3㎝で
す。ヒトの回虫は雌が20~30㎝、雄が14~22㎝です。体長は通常0.5~4mmですが、1mを超す大きさの種もいます。約1万種が確認されていますが、地球全体で50万種ほどが存在すると推定されています。https://en.wikipedia.org/wiki/Nematode。
探してみると、Placentonema gigantissimaは、マッコウクジラの胎盤に寄生する巨大な線虫です。 8.4メートルの長さと2.5センチメートルの直径で、これまでに報告された最大の線虫です。1950年代にキュリー諸島周辺で発見されました。https://en.wikipedia.org/wiki/Placentonema_gigantissima
総胆管どのような役割をしているのか。高等動物では胆嚢管と総肝管が合流し、十二指腸
につながっている部分です。出口では膵管と合流します。肝臓や膵臓は消化管の器官と
考えてください。肝臓では取り込んだ栄養素を蓄積するとともに、解毒した物質や消化
酵素などを胆嚢に蓄え、十二指腸に排出します。膵臓もリバーゼなどの酵素を産生し膵
管から十二指腸に排出します。
側生動物。どのようなグループか。また、属している動物には何があるのか。側性動物は
多細胞生物ですが、明確な臓器や器官、組織をもたない動物群で、現存する動物は海綿
動物門のみと考えられています。
ツボカビ門とは?真菌のなかでは、最も古い真菌群です。カエルツボカビは両生類(カエ
ルやサンショウウオ)のケラチン化した表皮細胞に寄生します。ツボカビ自身は移動し
ませんが、遊走性の配偶子(ツボカビは無性生殖なので無性胞子です)は鞭毛をもち水
の中を移動します。
虫嚢:肺吸虫の成体が肺に寄生し生活する際に作る袋(嚢)。虫嚢をつくりその中に寄生す
る。むき出しで寄生すると宿主の防御機構等に攻められる、肺で直接的に空気に触れるの
を避ける、虫体の周りを水溶液でみたす、等の意味があるかもしれません。
トリコミケス網→節足動物の腸内での働きは何ですか。分かっていないようです。すべてが昆虫・多足類・等脚類などの節足動物の腸内などに生息します。栄養関係が不明であり、寄生であるかどうかもわかっていません。
ネオカリマスティクス目→草食動物の消化管内には共生できるのにそれ以外の動物の消化
管内に共生できないのはどうしてですか。ネオカリマスティクスは絶対嫌気性の真菌類の一群で、主に反芻動物の胃や盲腸などの消化器にのみに生息する、ルーメン(反芻動物第1胃)真菌です。現在ではネオカリマスティクス門から綱、目までは単型(1つのみ)であり、ネオカリマスティクス科のNeocallimastix 属など6属を含むだけです。非常に特殊な真菌といえます。セルロース分解能が高く、キシラナーゼやグルカナーゼも持っており、難消化性の繊維が優占する環境下で生活しているので、草食獣特に反芻獣で共生するのに適しています。エネルギー生産の場としてミトコンドリアを持たず、代わりに嫌気環境下で機能するハイドロジェノソームを持っています。ハイドロジェノソームはATPを産生するとともに水素を発生します。炭酸ガスと水素からメタンを合成するメタン細菌との共生も考えられます
肺吸虫症の症状(ヒト)は?創傷性の肝炎、腹膜炎、胸水の貯留、気胸、発熱、発咳、血
痰などが見られます。血液所見では好酸球数増加を伴う白血球数の増加です。脳へ侵入
した場合は、頭痛、嘔吐、てんかん様発作、視力障害などを示して死亡例があります。
不完全菌類→擬似有性生活環をもつものがある。子嚢菌・担子菌群などで、有性生殖のステ
ージが未発見で分類学的な位置がよくわからないものを仮にまとめた群です。有性生
殖のステージが分かれば、接合菌、子嚢菌、担子菌などに分類されます。
フィラリア→フィラリアの幼虫の死骸が血流にのって肺以外に到達した時の症状も肺に到
達した時と同じですか。通常、肺でも肺以外でも無症状のことが多いです。CTやMRIで肺結節(肺がんなど)として認められ、バイオプシーで、フィラリアが確定診断されることが多いので、特に症状はありません。肺血管に塞栓を起こした場合は咳、血痰、発熱、胸痛などの症状が出現します。
ペンシリン→抗生物質と抗菌薬はどのような関係か?抗生物質(anti-micro-biotic:直訳すれば、抗-微-生物・物質)、抗菌薬(抗菌剤)、抗微生物薬などの言葉が使われています。内容的には類似しています。しかし、厳密には、少し違います。抗生物質は真菌や細菌が産生し、他の細菌や真菌の増殖を抑える物質です(原虫に効くものもあります)。また、サルファ剤やサルバルサン(ヒ素)のように化学合成された物質で細菌や真菌などに効くものもあります。これらを含めて抗菌薬といいます。さらに抗生物質や抗菌薬、抗菌ペプチドなどには、細菌・真菌のほかに原虫などにも効くものがあります。これらは抗微生物薬(抗微生物物質)ともいわれます。
片節、どの部分を指すのか。条虫は基本的に頭部の頭節と体を作っている片節(体節)からなります。片節(体節)は排出されるときにちぎれて個々の片節になります。この中には精巣と卵巣があるので、多くの受精卵を生産します。
メールス腺どのような器官か。Mehlis' glandの正確な役割はわかっていないようでが、腺腔は子宮に開口し卵の卵膜の補強、硬化(卵殻膜形成)に働く物質を分泌しているようです。
有性胞子:真菌類には無性生殖をするもの、有性生殖をするもの、環境条件により無性生殖
と有性生殖をするものなどいろいろあります。無性生殖をおこなうものが二分裂でなく、次世代のための配偶子を産生する場合は、無性胞子となり、これはクローン増殖になります。有性生殖をおこなう真菌類が次世代の配偶子を産生する場合は、有性胞子となり、他個体の配偶子と受精することもできます。有性生殖をおこなう真菌類は、①子嚢果と呼ばれるカプセルの中の、さらに小さい袋(子嚢)の中に4~8個の子供(子嚢胞子)を作るパン酵母、水虫菌などの子嚢菌類、②キノコを発生して傘の裏側の表面に子供(担子胞子)を作る担子菌類、③雌雄の親菌糸がくっついた所に接合胞子と呼ばれる子供ができるクモノスカビなどの接合菌類があります。有性生殖では両親の遺伝子が半分ずつ子供に伝わります。http://www.pf.chiba-u.ac.jp/medemiru/me07.html
輪精小管どのような生殖器か。肺吸虫は雌雄同体なので精巣で作られた精子を輸送する管
(輸精小管)が子宮につながり卵巣で生産され排卵された卵子と受精する。
3胚葉生物になって、内胚葉が陥入し(原口)消化管ができる時、原口がそのまま口とし発生する動物が前口動物(旧口動物です)。扁形動物、環形動物、軟体動物、節足動物などです。原口が肛門になる生物が後口動物(新口動物)です。棘皮動物、脊索動物、脊椎動物などがこれに入ります。
第4回は、線形動物から進化した脱皮を繰り返すグループで、甲殻類(エビ)と節足動物で最も繁栄した昆虫類(ミツバチ)を取り上げます。カンブリア紀を経て一気に多様化した生物(カンブリア紀の生物体爆発)たちは、植物を含め、それぞれ陸上に上がっていきます。ここでは触れませんでしたが、扁形動物は軟体動物へと分岐していきます。
授業中に疑問になった赤血球とヘモグロビン(あるいはヘモシアニン)の関係についてはスライドに加えました。ヘムは細菌のところでもでてきましたが、酸素の運び屋としてのヘモグロビンを細胞に取り込んだ赤血球(基本的には脊椎動物門から)、やがて脱核して核のない運び屋専門の細胞に変化する(哺乳類から)過程は、なかなか複雑です。
第4回 理解できなかった単語
インターロイキン:白血球から産生される分子で、リンパ球や単球、マクロファージなどに免疫応答などを誘導させる働きをします。細胞間( inter- )白血球( leukocyte)因子( -leukin )としてまとめ、Interleukin と名づけました。現在までに30種類以上のインターロイキンが同定され、発見された順番に番号が付与されています。各インターロイキンは、白血球から産生されると標的細胞の表面に発現する受容体に結合しシグナルを伝えます。
エディアカラ動物群:先カンブリア時代の化石群、どのような動物群か。1946年にオーストラリアのエディアカラで大量の動物の化石が発見されました。これらの動物の化石がエディアカラ動物群です。その後の火山爆発と捕食者により絶滅したと思われ、これらの動物を先祖とする現生生物はいません。化石から見ると、同心円状や左右対称, 葉状で平らという、自然界で最も単純な形態であることが大きな特徴です。また、多くの化石部分が凹んでいる凹型であることから、現在のクシクラゲのような軟らかい体を持っていた生物と考えられています。
エディアカラ動物群は、なぜ大きくて薄い構造だったのですか。まだ体が出来始めた時期だ
ったために、丸くて小さいような、まとまった体にできなかったのですか。強力な捕食者がいない状況では、ゆっくり動き、少ないエネルギーで浮遊するほうが有利かもしれません。餌が豊富で、敵がいないなら、コンパクトである必要はなかったのでしょう。カンブリア紀の生物爆発で捕食者が現れ、切磋琢磨する中で、エディアカラ動物群が絶滅したのは、このためだっかもしれません。
エビの額角→どのような役割があるか:額角の役割はあまり明瞭ではないようです。額角
は、頭胸甲の前端が角状に伸びた部分のことです。上緣、下緣には歯が並んでおり、身を守るのに役立ちます。額角の形状、棘(歯)の大小や形、数などは種を同定するためには役立ちます。ちなみにボタンエビでは、額角は頭胸甲長の 1~1.5倍で,上縁に 17~20本,下縁に 7~10本の可動棘と先端部下縁に 0~2本の不動棘がついています。
エビの顆粒球→異物の被包化はどのように起こるのか?エビの顆粒球が異物の周りに集ま
り、貪食・融解、消化できる場合はそれで終わりますが、異物が簡単に処理できない場合は、沢山の顆粒細胞や他の血液細胞が集まり、異物を繊維性の蛋白で包んでしまいます。このことを被包化(カプセル化、encapsulation)といいます。
エビの血液:エビの血液は何色ですか?ヘモシアニンによって酸素を運搬するのはイカ・タコ・貝類の軟体動物や、エビ・カニの節足動物(甲殻類)などが知られています。但し、同じ節足動物でも昆虫は酸素を運ぶ血色素(酸素運搬蛋白)を持っていません。ヘモシアニンは酸素に結合すると青色になります。酸素が結合していないときは無色です。エビをゆでると赤くなるのはヘモシアニンの熱変性ではなく、餌からとったカロテノイドと蛋白質が結合したカロテノ蛋白質の変性によるものです。
エビの神経系は腹部側にあるということですが、なぜ腹部側になったのですか。背面にある
ほうが硬い殻もあるので傷つきにくいと思います。生物進化から見ると旧口動物は、中枢神経系が腹側神経索よりなる腹側神経系動物(ガストロニューラリア)です。他方、新口動物は中枢神経系が背側神経索よりなる背側神経系動物(ノトニューラリア)です。扁形動物、線形動物で発達した神経は、軟体動物や甲殻類・昆虫類の節足動物に発展しますが、基本的には腹側です。他方、新口動物では脊索動物(頭索動物、尾索動物)が、いずれも神経管を背側に作り、そのまま脊椎動物に受け継がれています。最近、旧口動物と新口動物の形態形成(ホメオボックス)遺伝子の分布は反対になっていることが言われています。すなわち新口動物の背側は旧口動物の腹側になります。そうだとすれば、神経系は、腹側・背側という関係でなく、どちらも同じ位置にいたことになるのかもしれません。しかし、それでは何故、新口動物と旧口動物でホメオボックスが逆転したのか?あるいは分岐した初めから逆転していたのか?わかりません。
オスの蜂は交尾の直後に何故ショック死をしてしまうのか。女王バチと雄バチたちの交尾では、ときには数キロも離れた場所から雄バチが集まってきます。女王バチは雄バチを惹きつける強力なフェロモンを放出し、雄バチは女王バチに群がります。女王バチは何度も交尾をしますが、雄は一度しか交尾できません。雄バチが女王バチに触れてから精子を渡すまでは、わずか数秒という短さです。この短い間に、雄バチの腹部に納まっていた生殖器は外側に反転します。その瞬間に、精子が女王バチに打ち込まれます。同時に、オスバチの体は麻痺・硬直して死に至ります。このような光景が、何匹もの雄たちによって繰り返されるのです。結局、うまく女王蜂と交尾に成功し、思いっきり精子を放出すると、その途端、オス蜂の性器は引きちぎられ、ショック死して落ちていきます。
カンブリア紀:カンブリア紀の生物の化石が発掘された地域は、イギリスのウェールズ地方です。ここは、かつて「キムル」という部族の名前でよばれていた。キムルをラテン語に訳すと「カンブリア」となり、その名前からカンブリア紀と名付けられた?
カンブリアはウェールズの名前である。カンブリア、Cymruは、ウェールズの国名でラテン語名である。この語は、ローマ時代には用いられなかった。というのは、この時代、ウェールズが別個の存在としては認められていなかったからである。後になって、中世にイギリスの大部分がアングロサクソン圏となり、新しいアングロサクソン王国(イングランドになる)と残りのケルト王国(ウェールズになる)の間の領土の区別がついた後、この言葉が復活した。 西洋のキリスト教世界における学問の第一言語がラテン語となり、記述者はケルト王国の英国領を指す言葉が必要となり、その領土にウェールズの名前に基づいてカンブリアをあてた。https://en.wikipedia.org/wiki/Cambria
気門:気嚢は体を軽くしたりするためのものですが、気門はただの空気を入れるための
穴ですか。そうです。昆虫や同じく節足動物に入る蜘蛛類は、空気が気管に入ることを可能にするために、外骨格に気門を持っています(昆虫では主に左右に10対)。昆虫の呼吸器系では、気管小管は基本的に動物の組織に酸素を直接的に送ります(細気管支や肺胞はありません。ただし循環血液中には赤血球はありませんが、ヘモシアニンorヘモグロビンはあります)。 気門は効率的な方法で開閉することができることで、水分損失を減らすことができます。 これは、気門を取り囲む筋肉を収縮することによって行われます。 気
門を開けるには、筋肉を弛緩させます。これは中枢神経系によって制御されていますが、局所の化学的刺激にも反応します。気門閉鎖のタイミングおよび持続時間は、昆虫の呼吸速度に影響を及ぼします。気門は、開口部の周りの大気の動きを最小限に抑えるために毛で囲まれています。このようにして水分の損失を最小限に抑えています。
胸肢と遊泳肢(解剖図)では動き(働き)の違いはあるか?エビの種類により違いがあるよ
うです。一般に、エビの胸脚(胸肢、歩脚:ハサミ、歩き)は5対、腹脚(遊泳肢:移動、泳ぎ)が5対あります。5対の胸脚はクルマエビ類では前3対にハサミを持ちます。テナガエビ類では前2対がハサミをもち、タラバエビ類では第2対目だけがハサミをもち、センジュエビ類では5対すべてにハサミをもちますが、イセエビ類ではまったくはハサミ持ちません。すべてのエビ類はこれらのいずれかの型に属します。腹脚は葉状の内・外枝からなり、腹肢ともよばれます。腹肢は遊泳型エビ類では泳ぎにとって重要な運動器官であり、またコエビ類やザリガニ類の雌は卵を腹肢の毛につけて守ります。生息状態や生体、生息環境によってずいぶん変わってきています。
クチクラ層とは?表皮を構成する細胞がその外側に分泌することで生じる丈夫な膜をクチクラ(cuticle, クチクラ層)といいます。昆虫をはじめとする節足動物の場合、クチクラは外骨格を構成します。甲殻類ではキチン質という多糖類が主成分を占めます。
結節:結節とは何をするのですか。医学では、いろいろな状況で結節(nodule、小さな節
small nodeという意味)という言葉を使います。特に組織病変では病理学で、臨床的に
は肉眼所見で記載されることが多いです。一般に、比較的小さい、限局性で円形の病変を意味します。その代表は、結核性病変の特徴である結核結節です。体内に入った異物や感染病巣などを生体防御系の細胞が浸潤して取り囲んだ状態が小さな節(ふし)のように見えるのでこのように表現されます。異常な細胞が増えて小さな塊にときには増殖性結節(nodular hyperplasia)ですが大きくなれば腫瘤(腫瘍、癌)と呼びます。
原白血球 私たちが持つ白血球とは何が違うのですか。一般に言う白血球は末梢血にある血液細胞(赤血球、単球、顆粒球、リンパ球など)です。昆虫類の原白血球はヒトでいうなら骨髄にある、いろいろな白血球に分化することのできる造血幹細胞(hematopoietic stem cell)に相当します。
甲殻類のところに海で進化した節足動物と書いてありましたが、川に棲むカニも居ると思
います。川にいるカニは、もとは海から来たということでしょうか。そうです。海に生息するカニやエビなどは幼生の時期は成体とは大きく異なった姿をしています。孵化後、プランクトンとして脱皮や変態を繰り返して成体のそれに近づいていきます。他方、淡水に生息するザリガニやサワガニなどでは、これらの幼生期を卵の中で過ごして稚エビや稚ガニになってから孵化します。卵はその間に必要な栄養を含むために大きく、産卵数は少ないという特徴があります。このような変化は海での生活から分岐して、淡水での生活に適応していったことと関連があると考えられています。
コレラやチフス→コレラやチフスとはどのような症状か?チフスは高熱や発疹を伴う細菌感染症の一種で、広義では腸チフス(サルモネラ)、パラチフス(サルモネラ)、発疹チフス(リケッチア)の三つが入ります。しかし、一般には腸チフスとパラチフスを、狭義には腸チフスを言います。腸チフスにはキノロン系、第3世代セファム系の抗生物質が有効
ですが、耐性菌も出てきています。コレラは、コレラ菌(Vibrio cholera)の感染、普通2~3日、早ければ数時間の潜伏期で発症します。通常、突然腹がごろごろ鳴り、水のような下痢が1日20~30回も起こります。また、「米のとぎ汁」のような白い便を排泄することもあります。腹痛・発熱はなく、むしろ低体温となり、34度台にも下がります。重症例では、急速に脱水症状が進み、血行障害、血圧低下、頻脈、筋肉の痙攣、虚脱を起こし、死亡します。
重合系?:重合系としての凝固蛋白質はフィブリンのことですか。重合系としてしまいましたが、重合はモノマー(単分子、単量体)がポリマー(重合して、多量体や高分子)化する反応(polymerization system)です。ここでいうmultimeric systems(多素系、多段系、この訳も適切でないかもしれません)は、血液蛋白質の凝固系(フィブリン)や補体系(コンプリメント)で見られる反応です。この系は、一つの反応からカスケード状(段々状、連鎖反応的)に順序を追って次々と反応が起こる系です。前の蛋白分子が開裂すると、それが次の蛋白分子の開裂を誘導し、反応が繋がっていく系(システム)です。
女王蜂はいつからフェロモンを出す事ができますか?生まれた時には出せますか?生まれ
た時はだせません。女王バチとして成熟し分蜂して新しい巣を作る時、雄バチを引き寄
せるフェロモンをだします。交尾して卵を産み、多くの働きバチが孵化して成熟すると
働きバチを統御するためにフェロモンを出します。
女王蜂の成り方:数匹の女王蜂候補のなかから一匹が女王蜂になりますが、その女王蜂候補
はどのように選ばれるのですか?王台でたまたま生まれたメス蜂が女王蜂候補となるのでしょうか?また、巣の中に王台は何個あるのでしょうか?おもしろい質問です。女王バチが卵を産む段階では、女王バチになるか働きバチになるかは、特に違いはありません。巣の中にある大型の王台に産み付けられ、ローヤルゼリーで育てられた幼虫が女王バチ候補です(数匹程度)。女王バチになるのは1匹だけです。結果は簡単で、候補の蜂の中で一番先に王台から出てきた個体が女王バチです。最初に大台から出て来た蜂が他の王台から出て来てない女王バチ候補を、働きバチと協力して、皆殺しにします。もし、同時に2匹の女王バチ候補が王台から出れば、対決し勝ったほうが女王になります。
小球細胞が認識するβ‐グルカンには何があるか。β-glucanは、グルコースがβ-グリ
コシド結合で繋がった重合体(多糖類)の総称です。単にβ-グルカンと言った場合は、通常β-1,3-グルカン(グルコース、6単糖の炭素の1位と3位が順次、結合する)のことを指します。細菌、真菌、酵母などの細胞壁を構成する天然成分です。この構造を生体防御細胞が認識し、病原体に対する防御反応を開始します。
神経系にはいくつか種類がありますが、どのようにしてその神経系を選択していったのですか。選択したというより、環境に適応する(食物連鎖、弱肉強食も生存環境に含まれる)なかで発達し、自然選択圧で選抜されていったのではないでしょうか。
セミ顆粒球···多くの作用を持っているからこれ一つで解決すると思うが、何故これ以外の
血液細胞があるのか?顆粒球の顆粒内にはいろいろな機能を持つ分子が入っています。またその内容は、顆粒球の種類によっても違います。病原体を認識する細胞、生体防御系細胞を呼び寄せる細胞、生体防御系細胞を活性化し増殖させる細胞、異物を取り込んで処理したり、被包化して封じ込める細胞、平常時に監視する細胞、緊急時に対応する細胞、修復に働く細胞、生体防御系全体を調節する細胞などなどです。1つの細胞でこうした機能を全部持つのは無理です。
走化性因子って何ですか?白血球が化学的刺激物質(白血球走化性因子:細菌、補体成分、
抗体、ケモカインなど)に向かって遊走していく現象で1888年にレーバーT. Leberに
よって明らかにされました。走化性因子は、白血球が浸潤する炎症反応の場に、よく見
いだされます。
チフス···腸チフスと同じものか、治療法はあるのか?チフスは高熱や発疹を伴う細菌感染症の一種で、広義では腸チフス(サルモネラ)、パラチフス(サルモネラ)、発疹チフス(リケッチア)の三つが入ります。しかし、一般には腸チフスとパラチフスを、狭義には腸チフスを言います。腸チフスにはキノロン系、第3世代セファム系の抗生物質が有効ですが、耐性菌も出てきています。
Toll様受容体→キイロショウジョウバエではなぜ病原体の認識に関わらないのか?Toll様
受容体はショウジョウバエでも病原体の認識に使われます。ショウジョウバエで最初
に見つかったToll遺伝子は形体形成(背側と腹側)にかかわる遺伝子でした。この遺伝子と類似の遺伝子として見つかった遺伝子がTollに似た(Tollの様な)遺伝子で、病原体などを認識する受容体であったためにToll様受容体といわれるようになりました。Toll様受容体(TLR)は、昆虫でも見つかっています.
貪食能:この能力を持っていない血液細胞には、何か利益はあるのですか?貪食能は主に
マクロファージ(単球)と好中球が持っており、外来の異物を取り込んで消化したり、不活性化します。他方リンパ球のような特異免疫細胞はマクロファージのような貪食細胞から処理した抗原を提示され、受容体を持ったリンパ球がクローン増殖して細胞性免疫や抗体産生を行います。またできた抗体で好塩基球はアレルギー反応を、好酸球は寄生虫などへの反応を起こします。さらに抗体は異物に結合し補体を介して貪食化(オプソニン化)を促進します。貪食能を持った細胞(マクロファージや樹状突起細胞)は、単に異物を食べるだけでなく、抗原提示をして免疫の主役の細胞達の活躍を誘導します。
2胚葉:どのようなものか?中胚葉が形成されないで、内胚葉と外胚葉由来の細胞から構成
される動物です。クラゲやヒドラやイソギンチャクなどが、刺胞動物に属します。形は 放射相称で、食性は動物食性です。接触したものを、刺胞で刺し、捕食します。 肛門は 無く、排泄物は、口から排出します。触手には刺胞という細胞小器官があり、これを外 敵などに刺して、外敵から身を守ったり、食物を捕食したりします。神経細胞は存在 し、散在神経系です。
肺魚:肺を持ち、肺呼吸を行うことができる魚、すごいですね。両生類的な特徴を持つ魚
で、肉鰭(にくき)綱の肺魚亜綱に属します。約4億年前のデボン紀に出現しました。現 生種は全て淡水産で、オーストラリアハイギョ1種、ミナミアメリカハイギョ1種、アフ リカハイギョ4種の、計6種のみが知られ「生きている化石」と呼ばれています。
働き蜂(成虫)の食物はなんですか?:働きバチの食物は、蜂蜜と花粉です。エネルギーを
つくりだす糖を主成分とする蜂蜜が主食、蛋白・ビタミン・ミネラルなどを含む花粉は
おかずといえます。
働き蜂→働き蜂の役割にはどのようなものがあるか:働き蜂は群が必要とするほとんどの仕事をします。仕事の種類は成虫になってからの日数を追って変化します。内勤と外勤とに分かれていますが,内勤の間では,育児(ミルク分泌),造巣(蜂ろう分泌),貯蜜(酵素分泌)の3つが体の変化に伴う大きな流れとなります.外勤蜂は、一番日齢の進んだものとなることで,働き蜂が減りにくい分業構造となっています。
働き蜂と女王蜂の寿命の差があるのはなぜか。女王バチは分蜂し、新しい巣作りを始めると、数年間にわたって卵を産み続け巣を維持します。そのため女王バチの寿命は数年間にわたります。他方、働きバチの寿命は1か月程度です。女王バチが1日1000 ~2000 個の卵を産み、1つの巣が40000~80000匹の働きバチで維持されるとすれば、平均60000÷1500=40日くらいで回転するのが理想的といえます。ゲノム的には働きバチも女王バチも違わないので、ローヤルゼリーで成長し大型になった女王バチでは、遺伝子のメチル化やヒストンのアセチル化、あるいはテロメアの修復など、遺伝子配列とは関係しないエピジェネテックな変化により、長寿命化したのではないかと考えられています。
ヒートショック蛋白:熱ショック蛋白質(Heat Shock Protein、HSP)は、細胞が熱等のストレス条件下にさらされた際に発現が上昇して細胞を保護する一群の蛋白質です。蛋白分子が、リボゾームで合成され、小胞体で折りたたまれて高次構造を作る時に、分子シャペロン(折り畳みをする分子)としても機能します。
ヒヤリノ細胞。貪食能がないのにどのように貪食系に関わりますか?: Hyalinocyte は、甲殻類や二枚貝の血液細胞です。エビでは、全血液細胞の5~15%で、細胞質に比して小型の核を持ち、細胞質に顆粒を持たず、貪食能もありませんが、主に凝固系と貪食系に関連します。しかし、貝類(シンカイヒバリガイ)では、ヒヤリノサイトは、細胞の直径が10~15μm で1μm 程の顆粒を持ち、全血球の15%を占め、一部の細胞(1/4くらい)は、貪食能を持っています。また、直接的に貪食能のないリンパ球でも、マクロファージや好中球のような貪食能を持つ細胞を集めたり、活性化・増殖を誘導したり、あるいは抗体(or補体)のような異物にくっついて貪食させる(オプソニン化、料理する)分子を生産するなど、貪食系に関連する役割を果たします。ヒヤリノサイトにも似たような機能があるのかもしれんせん。
プロフェノール:これはどのような役割があるのですか?酸化されることで何が起こり
ますか?エビの血漿中の顆粒細胞が持つプロフェノール酸化酵素の役割は以下のように考えられています。プロフェノール酸化酵素系は、節足動物の防御機構において主要な役 割を果たしています。プロフェノール酸化酵素活性化は、ベータ-1,3-グルカン、リポ 多糖類、ペプチドグリカンなどの細菌や真菌が持つ微生物起源の化合物が微量に存在す ることによって引き起こされます。プロフェノール酸化酵素はトリプシンで開裂し、 フェノール酸化酵素となり、フェノール酸化酵素の活性化は、Caイオンとセリン蛋白 分解酵素で起こります。フェノール酸化酵素の活性化と同時に、抗菌作用、細胞傷害作 用、病原体貪食作用化(オプソニン化)、または被包化促進活性を有する因子の生成な ど、自然免疫反応が生じます。また、無脊椎動物における主要な先天性防御システム は、病原体および損傷組織のメラニン化で、この重要なプロセスはフェノール酸化酵素 によって制御されています。
ペテスマ外生殖口→ペテスマの意味:ペテマ(petesma)といい、エビの外部生殖付属器です。甲殻類の雄がPetesma masculine, 甲殻類の雌がThelycumというようです。雌では精子を受け取る口で、腹肢の付け根にあり、いつもは閉じています。
ペプチドグリカン認識蛋白···何をするものか。真正細菌の細胞壁はペプチドと糖を組み合わせた高分子から出来ています。ペプチドグリカン認識蛋白(受容体)は、細菌の侵入を認識し、生体防御系にシグナルを送る役目をする蛋白群です。
ヘモグロビンは脊椎動物だけですか?ミツバチにはないのですか?脊椎動物を含む脊索動物門では、脊椎動物亜門の動物だけがヘモグロビン(Hb)を発現すると考えられていました。しかし、頭索動物亜門の動物(ナメクジウオ)に発現したHbが見つかりました。Hbは、ナメクジウオの筋原組織および脊索に見られました。脊索および筋原組織のHbは、それぞれ約19kDの2分子が非共有結合した二量体分子でした。脊索中のHbは、0.036kPa(0.27mmHg)のPsOを有する比較的高い酸素結合性を持っています。脊索中のHbは、脊索の機能に必要な持続的な収縮を支持し、高レベルの好気性代謝を維持するために、酸素輸送を促進し、脊索細胞内に短期的な酸素貯蔵をもたらすのに関与していると思われます。後生動物の中で、Hbは、33門の動物うち12門に存在することが知られています。脊索動物門では、Hbは脊椎動物でほぼ普遍的に表現されているが、尾索動物亜門(ホヤ)には、ヘモグロビン遺伝子はありません。
歩行類→歩くが、遊泳類のように泳ぐことはできないのか?歩行エビは、比較的大型で、背
中が少し曲がっています(イセエビやロブスターなど)。水底を歩くのに適しており、やや横に平たい体型(横偏型)です。遊泳エビは、比較的小型のエビ(クルマエビ、アマエビなど)が多く、縦にやや平たい体(側偏型)で、腹部の脚が遊泳用に発達し、水中を泳ぐのに適した体型となっています。歩行エビも泳げないわけではありませんが、通常は水底を歩く行動をとります.
ミツバチ社会:免疫不全な状態で高密度でも感染症ですべてやられないことが不思議です。巣に40000から80000匹のミツバチがいるのなら一気に全滅し、他の巣にも広がっていきそうです。どのように感染症から免れているのかは、まだよくわかっていません。しかし、世界中では時々、蜜蜂の群崩壊症ということが起こります。突然、蜜蜂のコロニーが崩壊して、蜜蜂がいなくなってしまう現象です。感染症や農薬などの環境汚染、異常気象などの複合的な要因ではないかと考えられています。
ミツバチの腸:ミツバチの直腸、中腸は、なぜ発達しているのですか。ミツバチでは食道は
蜜嚢に繋がり、ここに蜜を貯めます。さらに胃孔と前胃を経て中腸に続きます。胃孔で
は花粉のような固形物だけが分別されて中腸に送られます。中腸は栄養分の消化吸収
を行う専門部位です。前腸と後腸は外胚葉ですが、中腸は内胚葉性です。後腸は細く短く直腸に繋がります。直腸は大きく,排泄物を巣箱外に排泄するまで貯えるための大きなスペースを持っています。直腸の上皮細胞は肥厚していて水分の再吸収や塩類イオンのバランス調節もしています。
ミツバチは、集団でいるのに感染症になって巣が全滅するなどといったことがないということですが、他の昆虫も感染症にかからないのですか。虫が感染症にかかったというのを聞いたことがありません。ミツバチの巣は時に全滅します。また昆虫類もウイルス、細菌、原虫、寄生虫症になります。
リゾチーム:酵素です。真正細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンを加水分解する酵素です。その作用があたかも細菌を溶かしているように見えることから溶菌酵素(lysis-enzyme, lysozyme)といわれます。厚い細胞壁をもつクラム陽性菌に有効です。ヒトでは涙や鼻汁、母乳などに含まれています。
リポ多糖体:グラム陰性細菌のところでやりましたよ。Lipopolysaccharide, LPSは、脂質と多糖から構成される高分子で、グラム陰性菌の外膜の構成成分です。LPSは内毒素(Endotoxin)であり、ヒトや動物など他の生物の細胞に作用すると、多彩な生物活性を発現します。重症例ではエンドトキシンショックを起こします。LPSの生理作用発現は、Toll様受容体 (TLR) 4を介して起こります。
ローヤルゼリー···これを貰ってどうするのか、食べるなら他のものでは駄目なのか。女王バチを育てるために使われる物質です。通常の花粉や蜜は、働きバチやその幼虫が育つのに使われます。ローヤルゼリーで育った女王バチは、体も大きく、圧倒的に長寿命で、沢山の卵を産み、分蜂して新しい蜜蜂社会を作っていきます。
You Tubeの第4回の講義は、9、生物進化4回の1エビ・カニ、10、生物進化4回の2ミツバチの2本です。
9、生物進化4回の1エビ・カニ
https://www.youtube.com/watch?v=hyrHHHiUWbc
10、生物進化4回の2ミツバチ
https://www.youtube.com/watch?v=CM1ADBwP1Z8
第5回はいよいよ脊索動物から脊椎動物(無顎類から顎口類)の登場です。ナメクジウオからヌタウナギへのジャンプ、軟骨魚類から硬骨魚類へのジャンプは、神経系、泌尿器系(浸透圧調節系)、免疫系にどのような変化を産んだのでしょうか?最後には肉鰭類が陸上に上がる準備を始めます。ゲノムの進化についてもここで説明したいと思います。
最初に、第5回の講義に関連する「わからなかった単語」の解説を載せておきます。スライドを理解する助けになると思います。生体防御系とゲノムの問題は、これまでも、これからの講義でもよく出てきます。今回の講義で基本的な部分を理解しておきましょう。
第5回質問回答
アシナシトカゲとヘビの違いは?足が退化したトカゲでも骨格には足があります。トカゲは瞬きをします(蛇はしない)。音を聞きます。尾を切ります。いろいろと違う点があります。でも、アシナシトカゲはやはり外形は蛇に似ていますよね。
アロ白血球抗原→多型性に富む膜抗原。ヒトでは赤血球の表面には、糖鎖抗原、A,B,AB,O
のような血液型抗原が発現しています。これと同様にリンパ球表面には、アロ抗原が発
現しています。HLAのA,B,C(MHCクラスI)の亜型として発現しているアロ抗原は、
免疫系の自己と非自己の識別、臓器移植の際などに重要な働きをします。MHCクラスIは、ほとんどの細胞に発現しています。癌細胞のようにMHCクラスIの発現を欠く細胞はNK(ナチュラルキラー)細胞の攻撃を受けます。また、ウイルスなどに感染した細胞はMHCクラスIの上に抗原を提示すると免疫リンパ球によりアポトーシスを起こすように指令され、他の細胞にウイルスを広げる前に自滅します。
イクチオステガは両生類なのか、魚類なのか。どちらかと言えば、両生類でしょうか?
そうですね。鰓がなく肺呼吸ですから両生類に近いと思います。
鰾:なぜ、鰓ではなく鰾が肺になったのでしょうか。魚類全般の呼吸器である鰓を進化されるのではなく、本来は浮力調整に用いる鰾を呼吸器に進化させたのか気になります。鰓は魚類の呼吸器ですが、海水に溶けた酸素を血液中のヘモグロビンに移す器官です。陸棲の動物は直接、空気中の酸素を細胞あるいはヘモグロビンに移す方法をとりました。水と空気では酸素量が違うため、皮膚呼吸や気嚢、肺という、環境にあった方法を発達させたと思います。
AH(腺下垂体)はGTH(性腺刺激ホルモン)陽性とはどのようなことかわかりません。
下垂体は、間脳由来の神経下垂体neurohypophysis(後葉)と腺下垂体adenohypophysis(前・中葉)とから出来ています。腺下垂体(腺性下垂体)は、ナメクジウオ(頭索動物)では内胚葉由来、ヌタウナギウナギ(無顎類)では、他の脊椎動物と同様、咽頭後部口蓋上皮の外胚葉に由来します。腺下垂体からは、通常、副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン、ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(サイロトロピン、TSH)、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピンGTH)、成長ホルモン(GH)、プロラクチンなどが分泌されます。ここではヌタウナギの腺下垂体で性腺刺激ホルモンが産生されていたということです。
塩類細胞→淡水(低塩類イオン環境)に棲む硬骨魚類では塩類イオンを体内に取り込む細
胞、海棲(高塩類イオン環境の)硬骨魚類では、体内に取り込んだ過剰な塩類イオンを
体外に排出する細胞。
オタマジャクシからカエルへの大きな変化は、どのようにして起こるのか?変態期には
ほとんどの幼生型の器官がプログラム細胞死をおこないます。また、その少し前から成
体型の細胞の増殖・分化が進行します。変態は細胞置換(cell replacement)によっておこ
なわれます。甲状腺ホルモンはカエルの変態を促進します。1912年Gudernashが、羊の甲
状腺の粉末を餌にまぜて与えると変態が早期におこることを見い出しました。変態期で
は、血中の甲状腺ホルモンの上昇、細胞の甲状腺ホルモン受容体の発現上昇が起こりま
す。また、この作用を相乗的に強めるホルモンがコルチコイドです。
肝盲嚢 どこの部分を指すのか分かりません。ナメクジウオでは、水分、餌、酸素を取り込
む鰓裂(えら、さいれつ)を包む袋となる鰓嚢があります。鰓嚢より後方には肛門まで腸 が続きますが、その途中に分枝があり、先端が閉じた細長い袋状の肝盲嚢という肝臓を入れた袋があります。単一の閉じた嚢(盲嚢)である肝盲嚢は、腸の下面から分岐し、脊椎動物にはない特徴として、食物粒子を貪食することができます。 肝盲嚢は、また肝臓としての多くの機能を果たしますが、真の肝臓ではなく、脊椎動物の肝臓のホモログ(同族)と考えられます。
汽水域:川と海の境部分であってますか。あっています。一般には川が海に淡水を注ぎ入れている河口部です。海水面は潮の干満により変動するので、満潮時には海水は河口をさかのぼり、干潮時には淡水がより下流まで流れ込みます。この両者の影響を受ける範囲が汽水域になります。河口付近では河川の上流から流れ込んだ淡水が上層にあり、その下に海水(比重が重い)があるという二層構造になっています。
気嚢:昆虫や鳥類に見られるとのことですが、昆虫のものと鳥類のものとでは機能や原理に違いはあるのでしょうか。鳥類の気嚢は、鳥の肺に続く空気を満たしている嚢状器官です。筋肉,骨 格,さらに各器官の間に入り込み,飛翔のために体の比重を軽くする働きをもつとともに肺内の呼吸気流の効率化を助ける役割を持ちます。昆虫類の気嚢は、気管に付随する嚢状器官です。空気を満たし,体重を軽くする働きをします。気管のような,管径を保持するためのキチン質の輪は存在しません。
クラススイッチ:得異免疫系で何をしているのですか。免疫グロブリンの基本構造は2本のH鎖と2本のL鎖が結合したIgGです。アミノ末端側に抗原と結合する可変部が、カルボキシ末端側に定常部があります。IgMは、外来抗原に対して最初に出来る抗体でIgGの5量体です。次いで産生されるのがIgGです。クラススイッチでMからGに代わります。抗原結合部位は変わりませんがIgGは、大量に生産され、補体活性化、IgG・Fc受容体を持つ細胞群を活性化します。さらに粘膜免疫に分泌抗体として働くIgA, I型アレルギーを誘導するIgEなどが、クラススイッチにより産生されます。クラススイッチは、クローン増殖を始めたリンパ球の中でさらに遺伝子再編が行われた結果、より上流にある遺伝子から下流にある遺伝子へと転写が変わることです。体内に抗原が持続するとリンパ球などから種々のインターロイキンが放出され、B細胞(抗体産生細胞)にクラススイッチを誘導します。
ゲノムのシンテニー(シンテニー)、どういうものかが理解できなかった。2種の生物のゲ
ノムを比較する際に,2つのゲノム領域の間にオーソログ遺伝子群(異なる生物に存在
する相同な機能を持った遺伝子で種の分岐上で別れたのも)が存在する場合,その2つの領域は、互いにシンテニーをもつといいます.2つの領域がシンテニーをもつことはその2領域が共通祖先ゲノムの同じ領域に由来することを示しています。従って、具体的には、染色体地図を作成するような場合、異なる種の染色体間で、遺伝子群が同じ順番で配置されていること、もしくはその領域を示すことになります。近縁の動物種では染色体上のシンテニー領域は多い傾向があります。
ゲノムが近い動物同士であれば、移植は可能ですか。無理です。ヒト同士のゲノムはそれ
ほど違いませんが、臓器移植は困難です。移植は免疫反応が関係します。主要組織適合抗
原(MHC)が一致しないと、同種であっても拒否されます。
ゲノムの進化についてもう一度説明してほしいです。ゲノムは個々の遺伝子と異なりゲノ
ムとしての進化戦略をとっているようです。それは、系統発生的に①ゲノム全体を倍加する方法を使いました。2倍体、4倍体、8倍体・・・両生類までです。②ゲノムは一見無駄な配列を沢山持っています(ごみ溜めDNA,ジャンクDNA)、③動く遺伝子が断片化し、機能を失った化石遺伝子も大事に?とってあります。まだ意味はわかりません。④動く遺伝因子等により染色体上を移動することで遺伝子の読み取り効率などを上げます。その意味では乗り物か線路です。しかし、他方でウイルスやミトコンドリアのように極力無駄のない遺伝子だけのゲノムを持つ生き物もいます。倍化、冗長性の獲得と刈込み、全く無駄をそぎ落としたゲノムと方向性が多様です。
鰓裂(さいれつ):鰓裂とは何か?具体的に。鰓裂は鰓孔、鰓穴と同義で、鰓(えら)の
裂け目のことです。脊椎動物の発生途上で,咽頭部の両側に生じてくる数対の裂け目となります。魚類など水棲の動物ではここに鰓が生じます。魚類と両生類では成体まで残って,鰓孔となります。しかし、肺呼吸する動物では再び閉じてしまいます。成体での鰓裂の数は動物種によって異なり,ヤツメウナギ(無顎類)では7対,顎口類の軟骨魚類では6 (まれに8) 対,硬骨魚類,両生類では5対です。
シグナルシークエンス:具体的にどういうものか。シグナルペプチドは、蛋白分子にある短い(3から60アミノ酸ほど)ペプチド配列です。シグナル配列(シグナル・シークエンス)、あるいは局在シグナル、輸送(移行)シグナルなどとも呼ばれます。細胞質内で生合成された蛋白質の、輸送および局在化を指示するペプチド配列です。例えば、リボゾームで読まれた糖蛋白(膜蛋白)が、糖鎖を付加されるために小胞体膜を通過するとき、通行手形のような役割を果たすペプチド配列をアミノ末端に数十個(約20~30前後)並べます。この特定のペプチド配列をシグナルシークエンスといいます。ちなみに小胞体移行シグナルは、H2N-Met-Met-Ser-Phe-Val-Ser-Leu-Leu-Leu-Val-Gly-Ile-Leu-Phe-Trp-Ala-Thr-Glu-Ala-Glu-Gln-Leu-Thr-Lys-Cys-Glu-Val-Phe-Gln-です。
終脳:これは、ヒトで言う所の大脳にあたるのでしょうか?広い意味ではそうですが、系統発生の古いものでは、脳自身が終脳にあたる(脳発生の神経管の最前部のふくらみ、間脳も含む?)と思います。大脳基底核、間脳ができ、中脳、延髄と複雑化し、小脳が加わる。大脳も基底核の上に海馬を中心とした旧皮質ができ、やがて大脳新皮質がその上に重なって、大脳半球ができたと思います。終脳という言葉は、ヒトでは胎生期の脳(終脳胞)発達に使います。
条鰭魚類と肉鰭魚類の違いは?硬骨魚類は大きく分けて、現生魚類の大部分を占める条鰭類、鰭(ひれ)の内部に硬い骨格は無く、スジが入っている鰭を持つ魚類と鰭の内部に硬い骨格があり、筋肉が発達している肉鰭類に分かれます。陸上へ進出した四肢動物は肉鰭類に由来します。現生の肉鰭類はシーラカンスや肺魚です。シーラカンスは、1938年インド洋のコモロ諸島で発見され,生きた化石として注目されました。胎卵性で鰾(うきぶくろ)を備えています。肺魚は、オーストラリア東部のネオケラトドウス,アフリカのプロトプテルス,南アメリカのレピドシレンの3種類が現生しています。淡水性で,時に干上がる川や沼に生息しています。鰓(えら)のほかに肺を備えています.
浸透圧順応型→魚類は1日にどれくらいの尿や便を排出しているか?面白い質問です。しかし、どう考えても千差万別でしょう。魚種、雌雄、成長過程、環境(淡水、海水)、餌などにより異なるので、魚一般というのは無理です。何か条件を決め、他の動物種と比較するとかしないと難しい。例えば、体重5㎏の雌マグロと体重5㎏の雌のカニクイザルを比較すると・・・・。しかし、マグロの1日当たりの尿量はどのようにしたら測れるか?考えてみてください。水を飲む量は1日当たりヒトが約2リットルですが、淡水魚は鯉が45ml、ナマズが300mlであるのに対し、ニジマスが2リットル、カサゴは11リットルも飲みます。https://www.press.tokai.ac.jp/webtokai/uminiikiru4.pdf
水棲動物の腎機能は?:動物の生息する環境により大きく腎機能が異なってくる。海生の無脊椎動や原始的な脊椎動物は、体液濃度を海水のイオン濃度とほぼ同じにすることで自分の身体から水が抜けていくことを防ぐ。また、細胞内の浸透圧を維持するためにグリシンやアラニンといったアミノ酸を蓄積する。他にも軟骨魚類は、尿素を体液や細胞内に蓄積することで体内と海水の浸透圧差を小さくしている。硬骨魚類は体内の浸透圧が海水の約1/3しかないので、そのままでは水は体外に出ていってしまう状況になる。恒常性を保つために海水を大量に飲み水分を補給し、そして同時に取り込む余分な塩類は塩類細胞で体外に排出している。淡水性の硬骨魚類は逆の反応を行っている。海水に住む硬骨魚類はできるだけ水を体外に出さないためにも腎臓から少量の尿を排出するが、淡水に住む硬骨魚類は体内に流入してくる水を腎臓で尿にして排出を行っている。
スケイン細胞:オタマジャクシの皮膚は、魚などの水棲動物に特有の細胞として知られるスイケン細胞(ヒトの皮膚の棘細胞に相当?)と、最外層に存在し、細胞同士が隙間なく密着しているアピカル細胞(ヒトの扁平上皮細胞び相当?)の2種類から出来ています。ただし、最下層にはヒトと同様に基底細胞層があります。カエルになるとスケイン細胞もアピカル細胞も消え、変態期に作られる基底細胞から成体の皮膚が形成され、最外層が角質化し哺乳類の皮膚と同様の構造になります。ただし尾はそのまま(幼体のまま)のこり、成体では免疫学的に拒否され消失してしまいます。
赤血球:鳥類までは赤血球は有核でしたが、哺乳類は無核です。有核と無核によるメリットとデメリットは何でしょうか。有核のメリットは、他の細胞と同じでDNA-RNA-蛋白の
セントラルドグマが成り立つので、細胞を取り巻く微細環境の変化に対する危機管理や柔軟な対応が可能になり、細胞としても寿命が長いでしょう。無核細胞では、脱核した段階でゲノム情報はなくなります。しかし、核のなくなった部分にもヘモグロビンを入れるのに利用できる?とすれば、酸素運搬には有利になるかもしれません。酸素はATP産生に必要ですが、反応性が強く危険な分子です。酸素という爆弾を抱えたような赤血球は、脱核し短寿命で入れ代わるほうが安全なのかもしれません。古い赤血球は脾臓などでマクロファージに貪食され、再利用されます。
単為生殖:どのような生殖ですか?有性生殖を行う生物の雌が単独で子を作ることを単為生殖(parthenogenesis)といいます。生まれる子の性が雌だけの場合は産雌、雄だけなら産雄、両性の生産が可能なら、両性単為生殖といいます。単為生殖では接合なしに新個体が作られるので、雌側の遺伝子のみを受け継ぐことになります。ミジンコでは、好適条件では雌が単為生殖により雌のみをどんどん生み、個体数を非常に素早く増やすことができます。個体群密度が上昇すると、雄が生まれ、受精を経て卵が作られます。この卵は厚い殻を持ち、休眠にはいります。乾燥に耐え、条件が良くなったときに孵化してくるので、耐久卵と呼ばれます。条件が良いと単為生殖、条件が悪化すると有性生殖を行って休眠にはいる方法は、アブラムシやカイガラムシなどにも見られます。
トランスポゾンの感染:どのようにして感染が起こるのか。トランスポゾン(transposon) は、細胞内においてゲノム上の位置を転移 (transposition) することのできる塩基配列です。 動く遺伝子、転移因子 (transposable element) とも言われます。 DNA断片が直接転移するDNA型と、転写と逆転写の過程を経るRNA型があります。ショウジョウバエのトランスポゾンの1つである、コピア因子は、宿主細胞のDNAから離脱すると、これがそのまま環状となって他の細胞に感染します。また、一度mRNAを転写し、これから逆転写酵素により多数のDNAを合成してこれが環状の状態で他の細胞に感染して、新しい細胞の中に入り、その細胞の染色体に組込まれることもあります。環状DNAの細胞への取り込みはエンドサイトーシス(貪食作用など)によると思われます。細胞質内を輸送され、核内に入れば増幅と染色体への挿入が起こります。
トランスポゾン:バクテリアの一種なのでしょうか?細菌よりはウイルスに近いようです。特に大型 のトランスポゾンは、構成要素としてDNA複製酵素、DNA切断・挿入酵素、両端反復配列を持ちますし、ウイルスのカプシド蛋白に類似する蛋白をコードする遺伝子も持っています。Maverick / Polintonトランスポゾンのような大型のものは、アデノウイルス、ヴィロファージ、バクテリオファージ、テロメアーゼ、真核細胞遺伝子の要素を混ぜあわせたゲノム構造の様です。もちろんレトロトランスポゾンのようにレトロウイルス由来と考えられるものもあります。最もウイルスがどこから来たか?メガウイルスは次第に細菌との違いが分からなくなってきているので、細菌からウイルス、ウイルスからトランスポゾンという経路も考えられます。トランスポゾン自身も多様性と進化があるので、様々な経路で出来ているのが本当かもしれません。
ナメクジウオ(頭索動物):鰓裂を持ち、光受容器をもっている。閉鎖血管系だが心臓はも
たず一部の血管で血液を循環させる動物。砂地に住み、外見は魚類に似ているが脊椎動物に存在する構造および椎骨がないため魚類ではなく頭索動物に分類される。最近ゲノム解析が進み、脊椎動物への共通祖先に位置すると考えられている。尾索動物のホヤは途中で分岐したと思われる。
ナメクジウオの血液循環:ナメクジウオは心臓をもたず、一部の血管が脈動し血液を循環さ
せています。そして血液には呼吸色素がなく、無色とあるのですが、体内にどのようにして
酸素を運んでいるのでしょうか。これまで脊索動物門では、脊椎動物亜門の動物だけがヘモグロビン(Hb)遺伝子を発現すると考えられていました。 しかし、頭索動物亜門の動物でも細胞内Hbの存在が明らかにされました。 Hbは、ナメクジウオの体内の筋細胞および脊索細胞で発現しています。 脊索および筋組織のHbは、約19kDの2分子が非共有結合し、二量体となっておりP50が0.036kPa(0.27mmHg)で比較的高い酸素結合親和性を有しています。脊索のHbは高レベルの好気性代謝を維持するために、酸素供給を促進し、脊索細胞内に短期間の酸素貯蔵を提供することに関与していると考えられます。ナメクジウオの血液は体腔の筋上皮層の収縮によって常に脈動する腹部大動脈に沿って動きます。口から飲まれた海水(餌、酸素)は、鰓裂でろ過され、ガス交換は鰓血管内で行われます。動脈は背側咽頭に流れ、細動脈では、酸素の豊富な血液がナメクジウオのすべての器官に入ります。過剰な二酸化炭素を含む血液はナメクジウオの頭部に入り、ガス交換を果たします。ナメクジウオは閉鎖血管系です。
ナメクジウオの閉鎖血管系の血液は、なぜ無色なのか?呼吸色素(酸素を運搬する色素)
分子を持っていないという説が多い、水中の酸素を直接細胞に渡すという考え方。しかし、最近の論文ではヘモグロビン遺伝子を持つという報告があります。また、ヘムエリスリンは、ヘモグロビンのように鉄を中心においていますが、酸素と結合していないときは無色透明です。ナメクジウオの酸素運搬はまだ結論が出ていないようです。
ナメクジウオ光受容体について:ナメクジウオにはヨーゼフ細胞とよばれる光受容体があ
りますが、これはどのようにして利用されるのでしょうか。エサを取る際に光をたよりにしているのでしょうか。そうですね。頭索動物ナメクジウオの神経索の先端には色素斑や層板細胞、ヨーゼフ細胞と呼ばれる光受容器があります。ヨーゼフ細胞は、3つの部分から構成されています。周辺部に伸びる微絨毛、細胞体、および細胞質処理部分です。明暗の処置は微絨毛の微細構造に影響します。暗闇の中で、微絨毛はより多く、より薄く、より規則的に配置されました。レチナール(受光色素)蛋白質は、ヨーゼフ細胞が位置する神経管の背面壁にのみ見られました。これらの結果は、ヨーゼフ細胞が実際にロドプシン(網膜の視物質でオプシンとレチノールの複合体)様物質と微絨毛を持つ光感受性細胞であることを示唆しています。この光受容器では、餌や敵を感知する外界の移動する影をとらえることができると思われます。
入水孔と出水孔:この二つの違いは?ホヤの仲間、例えば、ユウレイボヤの全長は大きなもので10cmほどあります。水(海水、酸素、餌)を取り込む「入水孔」と、水をはき出す「出水孔」があります。入水孔から入った水を、体内にあるエラのような器官でろ過してプランクトンなどを捕らえ、残りは出水孔から出します。
ヌタウナギは小脳が発達しないらしいんですが小脳の役割はどこが果たすのか?無顎類と顎口類の脳の発生における最大の違いは,①ヤツメウナギ(無顎類)の胚は大脳の内側基底核隆起をもたない。②小脳の発生の場となる菱脳唇をもたないことです。小脳は体性感覚や平衡感覚を受容し運動を制御する部分です。ヌタウナギには小脳がなく,ヤツメウナギにおいては未発達な小脳と一部の交連繊維がみられます。他方、顎口類(魚類)の小脳は,後脳背側部の“菱脳唇”の前方から生じます。ヤツメウナギは小脳が発生する場としての菱脳唇が進化的に未分化な状態を保持していると解釈されてきました。しかし,近年,ヤツメウナギの進化の過程において内側基底核隆起および菱脳唇は2次的に退化したのではないか?という疑問が出されているいます。ヤツメウナギは“原始的”な動物ではなく,5億年の進化をへてきているので,この過程において脳の2次的な改変や退化は起こりうるとも考えられます。いずれにせよ、無顎類の動物では、その生態系において体性感覚や平衡感覚から運動出力への微調整をする能力(小脳機能)は、それほど必要なかったのではないでしょうか。大海を泳ぎ、食物連鎖の頂点の一つを占める顎口類は、その運動機能の亢進と発達した大脳機能(体性感覚野と運動野の発達)の微調整が必要となり、小脳を発達させてきたと考えられます。
爬虫類以後からなぜ、肺呼吸が主体となったのか?爬虫類になって、ほぼ陸生に固定化した
時点で、空中の酸素を専用の呼吸器官(肺:肺胞を持つことで、ガス交換の出来る面積が 飛躍的に増加したので、他の方法は不要になったと思われます)、肺でガス交換するの が、最も効率が良くなったのでしょう。
白血球抗原:白血球抗原とは何か。白血球(リンパ終)の表面に発現する抗原分子群で、
非常に多様性のある遺伝子産物です。主要組織適合抗原(major histocompatibility complex)と呼ばれ、ヒトではMHCクラスIにはHLA-A,B,Cがあり、臓器移植の際の抗原として有名です。これが一致しない組み合わせでは移植臓器は拒否されてしまいます。もうひとつのMHCクラスIIには、DP,DQ,DR遺伝子群があり、マクロファージや樹状突起細胞(抗原提示細胞)が抗原を提示する際に関与するので病原体に対する免疫応答の強さに影響します。
皮膚呼吸とはどのようなメカニズムなのかがわかりません。:体表面は、本来、酸素を通過 させる機能をもっているので、肺のような専用の呼吸器を持たない動物は、体表を用い て外呼吸を行います。外の外気から(気門、気管小管など)から直接細胞が酸素を取り 込みます。例えば環形動物のミミズやヒル、あるいは小型の動物では皮膚呼吸だけで十 分なガス交換ができます。両生類でも一部の種類は皮膚呼吸のみで生きている動物がい ます(プレソドン科のムハイサラマンダーなど)。また、脊椎動物では、多くの両生類 や爬虫類は、肺呼吸と皮膚呼吸を併用します。咽喉部や総排泄腔の内壁に毛細血管の豊 富な部位があり、この部分がガス交換(赤血球への酸素の受渡し)に関与しています。
B細胞 IgMやIgGとか種類があるが違いはなにか?外来微生物等に対する抗体(免疫グロ
ブリンIg)の基本構造は2本のH鎖(重鎖)と2本のL鎖(軽鎖)がY字状に結合したIgGです。アミノ末端側に抗原と結合する可変部が、カルボキシ末端側に定常部(Igのクラスを決めているM,G,A,D,E)のドメインがあります。IgMは、外来抗原に対して最初に出来る抗体でIgGの5量体です(5倍の抗原結合部位を持つ)。補体の活性化などに強く働きます。次いで産生されるのがIgGです(クラススイッチでMからGに代わります)。血清中で最も多い免疫グロブリンです。さらに粘膜免疫の主役で、分泌抗体として働くIgA,I型アレルギーを誘導するIgEなどがあります。
VLRはMHCと同様の機能をもつのか?無顎類のリンパ球が産生するVLAにはA,Bがあります。我々でいえばVLA-Aはクローン増殖するT細胞受容体(TCR)に、VLA-Bは、抗原と反応し分泌される受容体(抗体)です。抗原提示に必要なMHCクラスIIに相当する分子、臓器移植に関連する(自己と非自己に関連する)抗原はMHCクラスIに相当し、無顎類のリンパ球ではALA allogenic leukocyte antigenになります。
ヘビは足が退化したのは何故ですか。トカゲとかと同じように陸で生活しているし、足があ
っても支障はないと思います。足があっても支障はないと思います。実際、後ろ脚のある蛇がいます(交尾の際にメスを抑え込むのに利用する)。蛇の化石には四肢を持つものもいるようです。蛇は足を形成する遺伝子(「ソニック・ヘッジホッグ」と呼ばれる遺伝子)のスイッチが働かないために足がなくなり、今の運動(移動)形体に適応したのでしょう。
ホヤの血球はなぜ高濃度のバナジウムを含んでいるのか。ホヤ(尾索動物)はヘモグロビ
ン遺伝子はないのでヘモグロビン(鉄)で酸素を運ぶことはできません。ヘモシアニ
ン(銅で酸素を運ぶ)遺伝子は持っていますが、実際に酸素を運搬しているか不明で
す。その代わり、バナジウム(V)を酸素結合団とするバナビンス(バナジウム結合蛋白群)を持っています。バナビンス(Vanabins) は、ホヤの血液に見られ、酸素結合のために、レアメタルのバナジウムを配合団の中に含んでいると推測されています。実際、マメボヤ科の数種は、350mMを超える濃度のバナジウムを蓄積しています。これは海水中のバナジウムの濃度より約1千万倍高い濃度です。これらの種では、バナジウム蓄積細胞として機能する単一の大きな液胞を有する印環細胞が存在し、バナド細胞と呼ばれています。 スジキレボヤのバナド細胞からはVanabin1、Vanabin2、Vanabin3、Vanabin4、VanabinPという5つのバナジウム結合蛋白が単離されました。これらの蛋白は細胞質や細胞小器官(V1,V2、V3)、細胞膜(V4)に分布しています。
ホヤ(尾索動物)は卵巣と精巣を1つの個体が両方持っていますが、ナメクジウオ(頭索動
物)も1つの個体が両方を持っているのですか。いいえ、ナメクジウオは雌雄異体で
す。繁殖期になると雌は卵巣(黄色)を、雄は精巣(白)を発達させます。そのため、こ
の時期だけは、外側から雌雄が見分けられます。
ホヤ:ホヤはセルロースを生成することが出来ますが、これは作り出されて身体のどこに使われているのでしょうか?ホヤ(尾索動物)はセルロースを合成し生活に利用する珍しい
動物です。頭索動物のナメクジウオはセルロース合成を行いません。セルロースはホ ヤのはホヤの体を覆っている被嚢に存在します(ホヤは被嚢で覆われているので、漢 字で海鞘と書きます)。被嚢は動けないホヤの体を守る役目があると考えられていま す。ホヤの幼生にも被嚢があり、尾部で魚の鰭(ひれ)の役割を果たすことが知られ ています。ホヤのセルロース合成酵素は、合成酵素と相同な領域とセルロース分解酵 素と相同な領域を持っています。また、ある種の細菌では合成酵素遺伝子と分解酵素 遺伝子が隣り合っていることが知られています。さらに、ホヤのセルロース合成酵素 にある分解酵素相同領域は、細菌のものに近いことが分子系統解析から明らかにされ ています。ホヤのセルロース合成酵素は、ホヤの祖先型動物が細菌からセルロース合 成酵素遺伝子と分解酵素遺伝子のユニットを獲得するという「遺伝子の水平伝搬」が 生じ、その後ホヤの中でこの2つの遺伝子が一つに融合したのではないかと推定され ています。
ミッシングリンク:免疫グロブリンの出来かたの図にあるミッシングリンクとは具体的に
どんなことをいっていますか?無顎類から軟骨魚類の免疫受容体(免疫グロブリンの可変
部による遺伝子再構成)の出来かたには、大きな違いがあります。この2つの生物の間に
入って両者をつなぐ生物が分かっていない(両者の連携:リンクがミッシング、失われて
いる)という意味です。ミッシングリンク、たとえば原核生物と真核生物のミッシングリ
ンクは今でも大きな問題です。単細胞生物と多細胞生物のミッシングリンクは、立襟鞭毛
虫でしたね。
水に住む生物は、みんな浮き袋を持っていますか。いいえ違います。浮き袋は消化管に由来
する肺と相同の器官です。①浮く機能、②肺機能、③聴覚の補助機能、④発音機能があります。浮き袋を聴覚の補助に使っているのは、コイ、ナマズ、ニシンなどです。音を出すのに使っているのはタラ・カサゴ科などの魚です。また、シーラカンスやハダカイワシでは脂肪分の入った浮き袋をもっています。浮き袋は血液中の空気を取り出して貯めておく装置で、“浮き袋をもつ魚が現れたのは比較的新しい時代”です。サメやエイなどの軟骨魚類は浮き袋をもっていません。サバも浮き袋をもっていません。マグロ類の中ではコシナガマグロが浮き袋をもちません。軟体動物ではイカも浮き袋をもたない事がわかっています。ただし、浮力を調整する手段は浮き袋以外にもあります。水より軽い脂肪と油脂を代わりに蓄える方法がサメや海生哺乳類で利用されています。
無顎類の特異免疫のところで、ヌタウナギのVLRにおいても負の選択が存在とありますが、この「負の選択」というのがまだ理解できていません。リンパ球は胚の発生時に胸腺で分化・増殖するときに「正の選択positive selection」と「負の選択negative selection」を受けます。正の選択は自己のMHC(主要組織適合抗原)クラスIIを認識できるリンパ球のみ増殖の刺激を受けて、増殖することができる過程です。そのうえで自己の成分と反応するリンパ球はアポトーシス(単個細胞死)のシグナルを受けて死んでしまいます(負の選択)。そのため、自己の抗原には反応せず、外来抗原にのみ反応する免疫リンパ球が選択されます。
有核の赤血球:羽ばたくことで飛行するためには莫大なエネルギーが必要なはずですが、なぜ、飛行能を持つ鳥類が酸素運搬に非効率的な有核の赤血球を持っているのでしょうか。気嚢を持つと言えども、空気の薄い上空では致命的な問題だと思うのですが…。哺乳類になって①脳で酸素が大量に必要になり、②赤血球を小型にして表面積を増やした(平板にして核を捨てた)、③蛋白合成(ヘモグロビン合成)を終え、分裂、修復も必要ないので核やミトコンドリア、リボゾームを捨てたなどの意見が多いけれども、なぜ、鳥類は空を飛ぶのに脱核した赤血球にしなかったかということを説明するアイデアは見つかりません。ヒトでも胎児の初期では赤血球は成人の4~5倍の大きさで有核ですが、途中からヘモグロビンは胎児型のまま脱核します。造血組織が卵黄嚢から肝臓にうつる時です。しかし、成体では鳥もヒトも骨髄です、ヘモグロビンも変わりません。赤血球の寿命は鳥では核があるにも係わらず約1か月、人は4か月です。でもマウスの赤血球の寿命は20~30日、猫が68日、馬が140日ですから、鳥類と哺乳類という違いではないし、核の有無でもないようです。また、無核の赤血球は哺乳類特有と思われていますがサラマンダー(有尾両生類)の中には,無核の赤血球を有する種がいます。さらに、ヘモグロビンを内包する細胞(赤血球)を持つ無脊椎動物(軟体動物)も確認されているので、単純ではありません。鳥が核を捨てなくてもよかったのは、肺とは別に大きな気嚢を沢山持っていること、ヘモグロビンの酸素乖離度がいいことで、酸素濃度が低い環境でも耐えられるからかもしれません。核を捨てる必要がなかった?
Rag遺伝子とはどのようなものですか。リンパ球が抗原特異的にクローン増殖するには、受精卵のゲノムを再編して、個々のクローンに特異的な受容体分子を作る必要があります。遺伝子組み換え活性化遺伝子(RAG)は、免疫グロブリン(Ig)およびT細胞受容体(TCR)分子の遺伝子の再編成および再構成に重要な役割を果たす酵素をコードしています。しかし、発達中のT細胞がB細胞と同様に受容体の編集を受け得ることを示唆する証拠はありません。 RAG-1およびRAG-として知られている2つの組み換え活性化遺伝子産物がありますが、その細胞内発現は、発達段階のリンパ球に限定されています。 RAG-1とRAG-2は、特異免疫系の重要な構成要素である成熟B細胞とTリンパ球の生成に必須です。
陸に上がると、なぜ副甲状腺ホルモンが必要になるのですか。副甲状腺ホルモンはカルシウムの代謝を調節します。カルシウムは生物が行きていくうえで、最も大切な分子の一つです。①生息域の変化:水中には多くのプランクトンのような食用微生物がいます。しかし、陸生動物は呼吸するだけでは栄養が入手できません。海水は3~4%のミネラル水なのでミネラル摂取は魚類では容易であり、むしろ摂取過多となる危険がありました。NaやCaなどの生体に重要なミネラルでも吸収を少なく、排泄をできるだけ多くし、摂取過多による高Na血症や高Ca血症を防御しやすいシステムを基本にしています。他方、陸生動物では、海水中のようにミネラルを無条件に摂取できるわけではなく、Caは貴重な栄養素になりました。② 内分泌系の変化:魚類は血液中にカルシトニンという血液中のCaを骨に蓄えるホルモンをもっていますが、両生類以上の動物では、魚類にはない、骨を壊してCaを引き出す副甲状腺ホルモンをもつようになりました。Caが豊富に摂取できるときにカルシトニンによりCaを骨に蓄え、不足するときには副甲状腺ホルモンにより骨からCaを必要なだけ引き出すことができるようになりました。③重力:空気中での重くなった体重を支える必要がでてきました。陸生動物では骨により強い圧力がかかり、骨もより堅牢になっていくとともに、大量のCaの蓄積ができるようになりました。
両生類はなぜ、皮膚呼吸ができるのか。動物が水生から陸生へと環境適応する過程で、呼吸
器系は①鰓呼吸(+鰾、うきぶくろ)、②皮膚呼吸(+気嚢)、③肺呼吸(+気嚢)と
いうように変化してきました。両生類は丁度、①から②の過程にある動物でしょう。
レクチン経路、第二経路、古典経路はどういったものか?補体は血液中にある蛋白群で、凝血系と同様に蛋白のカスケード(連鎖的)反応により活性化します。貪食作用を支さえるオプソニン化、白血球を集める走化性因子、複合体蛋白(C5~C9)として細胞膜に穴をあけ、標的細胞を破壊する役割などを果たします。この補体系を活性化する経路が3種類あります。最初に見つかった経路が古典的経路で、抗原抗体複合体に補体の第1成分(C1)が結合して反応が始まります。次に見つかったのは、微生物などが直接補体因子(D因子、B因子、C3)を活性化する経路で副経路、第二経路、プロパージン経路などと呼ばれています。最後に見つかったのがレクチン経路で、微生物などの糖鎖をパターン認識するレクチンを介して補体系を活性化する経路です。しかし、生物が進化上開発した経路は、古い順にレクチン、第2経路、古典的経路の順です。発見された経路の逆順でした。
You Tubeの第5回の講義は、11、生物進化5回の1脊索動物、12、生物進化5回の2魚類・両生類・爬虫類、13、生物進化5回の3ゲノムと進化の3本です。
11、生物進化5回の1脊索動物
https://www.youtube.com/watch?v=p7Q-RU0Jw-w
12、生物進化5回の2魚類・両生類・爬虫類
https://www.youtube.com/watch?v=3-o8W52Fr7Q
13、生物進化5回の3ゲノムと進化
https://www.youtube.com/watch?v=D_IQa8R8k30
ホメオボックス遺伝子から見ても、組織適合抗原の多様性などから見ても、脊索動物から脊椎動物になる過程で、何回かゲノムの倍化が起こったと思われます。両生類までは、種によるゲノム倍化戦略がとられたため、分岐図が分かりにくいです。脊索動物から無顎類には、ゲノム量の不連続性があるので、ゲノムの倍化があったと思われます。硬骨魚類は無顎類の最もゲノム量の少ない種から分岐し、軟骨魚類は無顎類の最もゲノム量の多い種から分岐したのかもしれません。また、軟骨魚類の中では、種によるゲノム倍化戦略があったと思われます。硬骨魚類から両生類に分かれる時に、再びゲノムの倍化が起こったかもしれません。鳥類は爬虫類の比較的ゲノム量の小さい種から分岐し、哺乳類は爬虫類の平均的なゲノムサイズの種から分岐したかもしれないですね。様々な動物種の全ゲノム解析が進めば、このあたりの秘密はわかるかもしれません。
爬虫類や鳥類ではゲノムサイズが減少することによる利点はどのようなものがありますか?
上のスライドに示したような、ゲノムサイズの多様性が、それぞれの生物界、門、綱、目で異なっています。これまでの説明が悪かった(間違っていた)と反省しています。
爬虫類や鳥類でゲノムサイズが減少して見えたのは,魚類や両生類では、ゲノムの倍化戦略をとったために、図に書くとそのサイズは小さくなったようにみえます。しかし、実際は、ゲノムサイズが減少したのではなく、両生類から爬虫類が分岐した時の祖先のゲノムサイズが維持されたと考えるべきです。種の分岐は、途中で起こるので、魚類から両生類の分岐は鯉くらいのゲノム量、両生類から爬虫類にはコモリガエルからツメガエルぐらいのゲノム量で分岐したのでしょう。
爬虫類から鳥類への分岐ではゲノム量の変動はほとんどありません。哺乳類は、免疫系など多様性の必要な遺伝子群を重複させ、多様化する戦略に変更したと思われます。その意味では、肺魚は両生類の、アカハライモリは爬虫類の直接的な祖先ではないということでしょう。既に種が分岐した後で倍数化したグループと言えると思います。
第6回は、いよいよ鳥類と哺乳類に入ります。体温の恒温性の長所と欠点は?恒温動物と変温動物という分類は不適切か?卵生(水棲、陸棲)と胎生の共通性と相違は?胎盤と構造的な違いと母体からの移行抗体は?空を飛ぶこと、視覚系の進化等について説明します。
第6回講義に関する質問の回答です。
移行抗体→移行抗体の働きはなんですか?母体から胎盤や初乳を介してもらう抗体。新生児は自分で抗体を作るのに十分な能力が発達していないので、自分で抗体を作ることができるようになるまで、母体からもらった抗体(移行抗体)で感染症を免れます。
遺伝子再編(再構成)の仕組みは?:免疫リンパ球の受容体蛋白(抗体-B細胞受容体とT細胞受容体)の多様性を産む仕組みです。受精卵のゲノム上には、免疫リンパ球の受容体をコードしている部分があります。抗体産生の例をとれば、抗体の多様性は重鎖(H鎖)にはVDJという3種類の領域にカセット上に遺伝子断片が並んでいます。V1V2…Vk(44個), D1D2D3….Dn(27個),J1J2…Jm(6個)という具合です。1種類の受容体を作る方法は、断片をランダムに切り出してつなぎ直し、組み合わせる方法です。例V2D3J1など、こうするとk x n x m通りの受容体ができます。抗原の認識部位はH鎖とL鎖(VとJの断片)の組み合わせで決まります。
牛はどこから血液を採取するのか。頚静脈から採血します。尾静脈から採血する場合もあります。
エコロケーション→エコロケーションは反響定位といいます。夜の闇では蚊のような小さな生き物は見えません。夜行性の小型コウモリは音の反響を受け止め、それによって周囲の状況を知ることができます。小型コウモリは喉から超音波を出し、餌である蚊など当たって反射してきた音を耳で聞き取ります。クジラや鳥の中にもエコロケーション能力を持つものがいます。視覚でなく聴覚で外界を認識する方法です。魚群探知機のようなものです。
オオコウモリは夜行性でしょうか、昼行性でしょうか。夜行性の場合どのように暗闇で飛行するの
か。 オオコウモリは夜行性です。視覚を使います。オオコウモリの中でルーセットオオコウモリだけは、視覚とエコロケーションが可能ですが、メインは視覚です。オオコウモリの眼が大きいのはそのためで両眼視(立体視)です。鼻が高いのは果実食のために嗅覚が発達しています。なた、オオコウモリの中には昼行性のものもいます。
カモノハシのような哺乳類で卵生の動物はどのような進化の仕方をしたのでしょうか?
カモノハシは、タスマニアとオーストラリアの東部の水辺にだけ生息しています。哺乳類なのに、①卵を産む、②総排泄口しかない(肛門、尿道、膣が一つになっている)、③体温調節は外温性、④腹部から分泌される乳で子供を育てる、⑤毒液を出す、という特徴を持っている。ただし、カモのくちばしのように見えるのは、鼻が伸びたものでありくちばしではない。⑥カモノハシが奇妙なのはその外見だけではなく、ゲノムも哺乳類というよりも鳥類や爬虫類に近いものであった。
鳥類や爬虫類と共通の祖先から哺乳類が分かれたのは約3億1500万年前であるが、カモノハシは、その後の哺乳類の系統樹の中で最初に分岐した枝に位置する。カモノハシにつながる祖先は鳥類や爬虫類の特徴を持ち続けた哺乳類と言えます。比較ゲノム解析が進めば、どのような進化を遂げたかが明らかになると思います。
これまでの研究から、カモノハシの染色体構成は他のほ乳類とは異なり、小型のマイクロ染色体を多数持つなど、むしろハ虫類や鳥類の染色体構成に近いことが知られていましたが、今回のゲノム解読により、カモノハシのマイクロ染色体とニワトリのマイクロ染色体間の共通性は低いことがわかりました。ところが性染色体を比べてみると、カモノハシのX染色体は、ほ乳類のX染色体よりもニワトリのZ染色体に近いことがわかったということです。カモノハシは、メスがX染色体を5対、オスではそれぞれ5本のX染色体とY染色体を持つなど、性染色体進化の観点からも極めてユニークであり、染色体構成がハ虫類型からほ乳類型へと変わる移行過程の生物ではないかと考えられています。
蝸牛:どのような働きを行っていますか?内耳にあって聴覚を司る感覚器官です。蝸牛管(cochlear duct)が納まっている側頭骨の空洞をさします。機能としては、鼓膜の振動をリンパ液に伝え、カタツムリの形をした(3回転半、基底回転から頂回転へ)筒にそっている有毛細胞の揺れが第八脳神経を介して脳の蝸牛神経核に伝わり、聴覚系の回路を上向して側頭葉の聴覚領野に伝わり音として理解されます。
恐竜は変温動物か恒温動物で分けた場合、どちらにより近いですか。諸説あるようです。嘗ては変温動物が主流で、その後、恐竜恒温動物説が言われるようになりました。しかし、最近、研究者たちが恐竜の化石から成長率を調べ、代謝率を推定したところ、その値は現代の温血動物と冷血動物の中間に位置していたということになりました。”中温動物”とでも呼ぶべきこのタイプの生物は、温血動物のように体温を一定に維持したりはしないが、周囲の環境よりは体温が高い特性を持ちます。現代では中温動物は希少ですが、ホオジロザメやマグロ、オサガメなどの例もあります。恐竜は冷血動物の爬虫類より機敏に行動することができて、同じサイズのほ乳類より少ない食糧で生き長らえることができたと推測されています。
魚類でも恒温動物(内温性動物)はいますか。魚類でもいます。アカマンボウ・マンボウ科のオパ、マグロ、サメの一種など。体全体を温めるものと、体の一部を温める魚類がいます。鰓や筋肉で熱を発生して、運動に使う筋肉を温めています。
クラゲとかは眼があるのに脳がないのでその眼に入った刺激はどのように伝わり周りを見ることができるのか?神経細胞はもともと入力系と出力系を仲介する細胞群です。網膜系で光刺激の 大きさや、方向を識別することにより、対象に迫るあるいは逃げる等の行動として出力することになります。クラゲにとってはそれで充分なのかもしれません。散在神経のクラゲでは、ヒトのように対象物が何かを脳で処理して認識しているわけではないと思います。
クリスタリン:どのような働きをしますか?動物の眼でレンズに当たる器官が水晶体です。この水晶体に存在する蛋白質の多くがクリスタリンという蛋白質です。クリスタリンは、重量にして水晶体の1/2〜1/3を占めます。哺乳類の場合、水晶体はα-、β-、γ-クリスタリンの3種の蛋白質の混合です。
ゲノム上の偽Pv遺伝子:鳥の免疫グロブリンの可変部位のでき方は哺乳類と異なります。哺乳類ではVDJの領域から1ずつ選ばれて組み合わせられます。鳥類ではファブリシウス嚢の中でB細胞が分化する過程で起こる遺伝子変換の仕組みが複雑です。①最初にVJの連結がおこります。このV遺伝子には多様性はありません。次いでV遺伝子の配列の一部が、その上流にある多数の偽Pv遺伝子群(V遺伝子に似ているがそれ自身では機能しない遺伝子群)と遺伝子組み換えを起こします。V-J連結を済ませた後にV遺伝子の配列の一部が偽Pv遺伝子中の配列に置き換えられる(コンヴァージョン)ことによってV領域の多様性が形成されます。
原鳥類は今の鳥類の最初の鳥ですか。現生鳥類の直系の祖先というなら違います。原鳥類(ドロマエオサウルス科の獣脚恐竜類)は鳥類に近い爬虫類(恐竜グループ)です。丁度、類人猿がヒトに近いサル類で、猿人がサルに近いヒトの祖先といった感じでしょう。現生鳥類は新鳥類から古顎類(ダチョウなど)と新顎類にわかれ、新顎類にはキジカモ類とneoaves類(ツル、チドリ、カッコウなど33目)が分類されます。しかし、鳥類は基本的には、1億5,000万年から2億年前ごろのジュラ紀の間に、獣脚類恐竜から分岐したので、原鳥類は祖先と言えば祖先です。
恒温動物→中学校の時に恒温動物と変温動物と習ったが、内温性動物は恒温動物で外温動物は変温動物ということなのか?いいえ、①恒温動物が哺乳類と鳥類で、爬虫類・両性類・魚類等は変温動物という風に習ったのが間違いという考えです。②恒温動物といってきた動物の中に変温動物種がいる。変温動物といってきた動物のなかに恒温動物種がいる。例えば変温動物の哺乳類・鳥類の動物種や、恒温動物の魚類の動物種などです。そこで外界の温度に影響されないで自分で熱を産生し体温を一定に保つ動物を内温性動物、外界の温度に体温が影響される動物を外温性動物と言おうという考え方です。
子牛の初乳による免疫グロブリンの吸収は人間の胎児も同じですか?ヒトは胎盤をとおして免疫グロブリン(主としてIgG)をもらいますが、一部は初乳にも免疫グロブリンは入っています。しかし、分泌型のIgAなので、腸管免疫に働きますが、牛の初乳のIgGに様に、新生児の血液中に腸管から直接吸収されることは少ないと思います。
コウモリはいつ頃日本に来たのですか?すごい質問です。日本海が広がり、日本列島ができたのが中新世の時代で2000~1000万年前です。それまでは大陸とつながっていました。白亜紀(1億4000万年前)の恐竜、鳥脚類の化石はありますから、これらの動物は陸続きや飛んで移動してきたと考えられます。哺乳類の祖先から翼手目が分岐したのが6500~7000万年前といわれています。化石では5250万年前のオニコイクテリスが最も古いものです。ココウモリは昆虫食です。エコロケーションを利用して夜間に、それほどの敵もなく、世界中に拡散したでしょう。日本列島ができた時にはすでにコウモリは日本にいたはずです。
ココウモリのように超音波を出すコウモリとオオコウモリのように超音波を出さないコウモリがいるのは、どのような理由があるのですか。小型コウモリは餌(夜行性の飛び回る昆虫が多い)を捕まえるのに超音波(エコロケーション)を使います。オオコウモリは果食性で、大きい目の立体視で餌を見つけます。そのため超音波は使いません。
コウモリの翼は、なぜ、あのような形になったのですか?コウモリの翼は、皮膜で出来ています。コウモリの前肢は、親指が普通の指の形で鉤爪あることをのぞけば、すべて細長く伸びています。飛膜はその人差し指以降の指の間から、後肢の足首までを結んでいます。アップストロークとダウンストローク時に、肩がわずかに湾曲するだけで、翼の動きがとても複雑になります。こうして翼を微妙に調整することで、急降下、急旋回、急上昇が可能となります。皮膜の湾曲は、皮膜中の筋肉の動きによります。この特殊な筋肉は、コウモリの飛行にとって絶対に不可欠です。この筋肉は、ダウンストローク時に緊張し、アップストローク時に緩み、翼の動きをサポートします。また、シフトギアのように、飛行するスピードに応じて屈曲と弛緩を調整します。この筋肉のおかげで、精密かつ高速な飛行が可能となるのです。
コンヴァージョン→gene conversionは、遺伝子変換のことです。遺伝子重複などによってできた、少しずつ異なる遺伝子が並んでいたり、遺伝子多型が生じた遺伝子群、すなわち多重遺伝子族や、類似した遺伝子群からなるファミリー遺伝子は、互いにその遺伝子構造が類似しているため、互いに遺伝子組み換えを起こしやすくなっています。遺伝子全体が変換された場合や、遺伝子の一部が変換されることを遺伝子変換といいます。
紫外線まで見えるのは、昆虫類だけなのですか。鳥類ではハチドリ、鷹、チョウゲンボウなど、金魚、ニジマスほか非常に多くの魚類、トカゲなども紫外線が見えます。
初乳:どのような仕組みで特定の期間のみ、初乳に免疫グロブリンなどの抗体が多く含まれるのか分かりません。
分娩前の乾乳期: ①ウシも分娩すると泌乳が始まります。泌乳期間は9〜10カ月ですが乳量は分娩後60日目ぐらいが最高、徐々に低下します。②この時期に次の分娩のために人工受精が行われます。③分娩から約300日目頃(次の分娩の2〜3カ月前)になると、乳量は最高時の3分の1まで減ってきます。④この時期に搾乳を中止し、乳牛の体を休ませることを乾乳といいます。⑤母牛を乾乳(およそ50日前後)することにより、体力回復や胎児への栄養補給、次の泌乳への養分蓄積を行います。
乾乳後から初乳までの乳腺の変化: ①乳汁成分は乾乳導入後,大きく変動します。乳汁蛋白ではラクトフェリン(Lf)が乾乳7日目にピーク値となり、②乳汁中の体細胞数は,乾乳15日目に400万以上の値を示し,その多くは,CD11b+(MacI)細胞です。Lfが乳腺上皮細胞のアポトーシスを誘導し,その結果生じる乳腺の老廃組織が,増加したMφにより迅速に処理されます。③一方,CD4+、CD8+T細胞比は乾乳導入直後から高値となり,そのピーク時期はB-B2+リンパ球(B細胞)数と同様,分娩20日前。③移行抗体の主体となるIgG1は,分直前に最大値を示した。④このことから,Lfがアポトーシスを介して乾乳期CD4+Tリンパ球を誘導する可能性,すなわち「泌乳期乳腺退縮後の乾乳期乳腺は,ホルモンの他に,Lfの作用により急速に移行抗体産生器官に移行することが示唆された」と報告されています。
初乳を飲むと、どのような影響があるのか。通常の牛乳よりは免疫グロブリンを含め蛋白濃度は高いと思います。経口摂取した場合、特に問題が起こることはないと思います。しかし、初乳の飲用を禁止しているのは、①免疫グロブリンを含んでいて、子牛が飲まないと、移行抗体がないので感染症にかかりやすくなる。②牛乳中の抗生物質残量を図る試験(TTC試験)で間違って陽性になる(初乳中の抗体による細菌増殖の抑制)ことなどが理由と思われます。
漿膜:どのような働きを行っていますか?漿膜は、①医学では腹膜、胸膜、心膜などの内面や内臓器官の表面をおおう薄い半透明の膜をいいます。表面はなめらかで、漿液を分泌する細胞で構成されています。漿膜から分泌される漿液によって臓器間の摩擦を軽減します。② 生物学では、爬虫類・鳥類・哺乳類の発生途上の胚と卵黄囊・尿囊をつつむ、一番外側のきわめて薄い膜です。また ③ 節足動物の胚の一番外側をおおう膜です。これらはいずれも漿膜です。中胚葉に裏打ちされた外胚葉の薄い膜と言えます。
Cλ遺伝子:どのような遺伝子なのか。免疫グロブリンは,基本的に2本のH鎖(Heavy chain,重 鎖、大きい分子)と2本のL鎖(Light chain、軽鎖、小さい分子)がS-S 結合した構造をしています。H鎖は可変領域(V領域)と定常領域(C領域)から出来ています。ヒトでは第14染色体長腕にあります。V領域はVH(variable),DH(diversity),JH(joining)の3つの遺伝子群から出来ていて,抗原特異性はV-D-Jの組み合わせにより決定されます。定常領域にはM,D,G,A,Eなどの遺伝子があり、クラススイッチで切り代わります(IgM, IgD, IgG, IgA, IgE)。L鎖は定常領域にkappa(κ)とlambda(λ)があり,可変領域は各々V領域(Vκ,JκとVλ,Jλ)でV-J連結をします。κ鎖の遺伝子は第2染色体短腕に, λ鎖ぼ遺伝子は第22染色体長腕にあります。
シンシチンとは?シンシチン-1(Syncytin-1、エンベリンともいわれます)は、ERVW-1遺伝子(内因性レトロウイルス・グループWエンベロープ・メンバー1)によってコードされているヒトと他の霊長類に見出される蛋白質です。 Syncytin-1の機能は胎盤発達において最もよく特徴付けられます。それは細胞と細胞を融合し、胎盤の合胞体性栄養膜を形成する蛋白質です。胎盤は子宮への胚の着床や栄養供給の確立を補助します。 Syncytin-1をコードする遺伝子は、霊長類の生殖系列に組み込まれた古代レトロウイルス感染の残骸(ウイルスの外殻、エンベロープ蛋白)である内因性レトロウイルス・エレメントです。Syncytin-1はヒト、類人猿、旧世界サルで発現しますが、新世界サルでは見られません。このことから約2500万年以上前にウイルス遺伝子の挿入が起こったと思われます。
シンシチン:内在性レトロウイルスに由来する膜融合性エンベロープ蛋白質は哺乳類の胎盤発生に重要な影響を与えています。この蛋白は哺乳類では、シンシチン(細胞を融合する因子)と呼ばれています。完全なかたちのレトロウイルスのエンベロープ蛋白質で、この蛋白質の発現により胎盤の合胞体性栄養膜が形成され機能します。これらの融合多核細胞は主に栄養交換の維持と胎児・母体間の免疫系を分離するために働いています。
センサリーロドプシンI(SRI):それがないと走光性行動は起こらないのか?センサリーロドプシン(光受容体蛋白)は微生物の細胞膜中に存在する光受容体である微生物型ロドプシン(microbial rhodopsin, Type I rhodopsin)のうち、吸収した光の情報を伝達する機能をもったものの総称です。そのためSRIなしには刺激が伝わらないので正の走光性行動は起こりませんが、光受容体蛋白は他にもあるので(SRII、負の走光性)、出力系(鞭毛など)につながり、走光性行動は起きます。SRIでも特別な2種類の光を受けると、正から負へ走光性が逆転します。
胎盤構造では機能は同じなのに形や構成細胞になぜ違いがみられるのか。各動物種の内在性レトロウイルスの違いによるという説もありますが、実際には、なぜ違うのかということは、まだ明らかにされていません。
胎盤構造:胎盤構造のところで、ヒトとラットは、同じ血絨毛性であるのに母体への侵入が違います。またウシとヒトでも母胎膜結合様式はちがうのに母胎への侵入は同じであるのはなぜですか?また、動物によって胎盤構造はことなることはわかったのですがヒトの胎盤と比べてどう違うのかが、あまりよく理解出来ませんでした。血絨毛胎盤の大きな特徴は、母体側が胎盤(結合織や上皮)をもたないことです。偶蹄類の胎盤は胎児側(上皮+結合織)と母体側(上皮+結合織)がそれぞれ胎盤を作り結合します(宮阜)。なぜ、動物種により違うのか?違うメリット、デメリットは何か?ということはよくわかっていません。ただ血絨毛胎盤は胎児胎盤(絨毛)が直接、母体の血液洞に触れているので、酸素や栄養物、老廃物の交換は容易であると思われます。また抗体のような高分子が胎児側に取り込まれます。
鳥類は、なぜ骨髄でB細胞の成熟を行わないのか?難しい質問です。魚類から両性類・爬虫類に分岐していくときに、外界の異物に直接、接触する鰓に付属したリンパ組織が、鰓が肺呼吸となり、その役割を失う過程で胸腺(T細胞中枢)ができます。外来異物に直接接触するのは呼吸器系と消化器系です。パイエル盤やファブリキウス嚢は消化器系リンパ組織(GALT:gut associated lymphoid tissue)の一部がB細胞中枢となったものとも考えられます。そう考えると、なぜヒトやマウスは骨髄でB細胞の成熟を行うのか?というほうが不思議かも?
同環境下で、変温性と恒温性ではどちらが有利か。食物連鎖からいえば、恒温性のほうが環境の影響を受けずに活動し続けることができるので有利かと思います。しかし、極端に暑かったり、寒かったりすると恒温性のほうがエネルギーを必要としすぎて不利かもしれません。例えば、氷点では外温性動物(魚類や両生類の多く)は平気でも、内温性動物は凍死することになるでしょう。
内温性動物:体温が主に代謝熱で維持されている状態の動物。長所は外温の影響を受けず、体温を活動するのに、より最適温度に近付けられる。短所はエネルギーを使って、産熱と冷却を行い、熱を体内で作り続けなければいけないことである。
内在性レトロウィルス・レトロトランスボゾン:外来性レトロウイルスに感染し、RNAウイルスゲノムがDNAに逆転写され、細胞の染色体に挿入されたものがプロウイルスです。挿入された細胞が体細胞であれば宿主の死をもって感染は終わりますが、生殖細胞に感染がおこると、生殖細胞の染色体に挿入されたウイルスゲノムは、宿主の世代を超えて伝達されます。これが内在性レトロウイルスです。さらに内在性レトロウイルスが長い間に、ゲノムの複製をされている時に、断片化したものがレトロエレメントです。この(レトロエレメントの)なかには動く遺伝子として遺伝子を運ぶ因子で逆転写と挿入機能を持つものがあり、レトロトランスポゾンと呼ばれています。レトロエレメントには、遺伝子として発見されたが、のちにレトロウイルスの遺伝子であることがわかったものが多くあります。
7回貫通型ヘリックス構造:これはヒトの目にもつながる基本的な構造なのですか?また、単細胞ですでに原始的な目を持っていますが、単細胞の目は何を見ることができるのでしょうか。ロドプシン蛋白質(光感受性蛋白質)は細菌からヒトまで類似しています。単細胞の眼は、光の波長と方向くらいでしょう、何か形を見るとか認識するというものではありません。外界の光の動きを感じ、反応する程度です。細胞膜蛋白質にはいろいろな立体構造が持つものがあります。その中の一つに、α―ヘリックス構造を持ち、細胞膜を7回貫通するタイプの蛋白質があります。ホルモンや神経伝達物質の受容体(レセプター)の中には、7個所の膜貫通領域を持ち、この7回膜貫通型レセプターはGTP結合蛋白質(Gタンパク)を介した情報伝達を行ないます。その構造は光のレセプターであるロドプシンに似ているため,ロドプシンファミリーとも言われています。
センサリーロドプシン(光受容体蛋白)は微生物の細胞膜中に存在する光受容体である微生物型ロドプシン(microbial rhodopsin, Type I rhodopsin)のうち、吸収した光の情報を伝達する機能をもったものの総称です。そのためSRIなしには刺激が伝わらないので正の走光性行動は起こりませんが、光受容体蛋白は他にもあるので(SRII、負の走光性)、出力系(鞭毛など)につながり、走光性行動は起きます。SRIでも特別な2種類の光を受けると正から負へ走光性が逆転します。
ナマケモノ→なぜ日当たり摂取量10グラムで生きていけるのか?哺乳類であるナマケモノが恒温動物でなく、外温性動物であるために、エネルギー消費量が比較的少ないのこと、それほど動き回らないので、少量の餌で生きていけます。
ナマケモノの特徴:哺乳類は一般的に恒温動物であるがなんで ナマケモノは変温動物なのか?理由はわかりませんが、生態系とナマケモノの行動(敵も多くなく、動き回って餌を大量に食べる努力をしなくていい?)から、活発に動くために外界の温度に影響されないで自分で熱を産生し体温を一定に保つ内温性動物として生きるよりも、外界の温度に体温が影響され、変動する外温性動物として生きるほうが、エネルギー消費の面から利点が多かったのでしょう。
ニューカッスル病:どのような病気ですか?マイナス鎖のRNAウイルスに属するパラミキソウイルスに分類される鳥の重要な感染症です。鶏、あひる、七面鳥、うずらでは法定伝染病に指定されています。OIEの分類では高病原性鳥インフルエンザと並んで最重要のリストAに分類されます。伝播力が強く、アジア型は神経病原性も強く致死的な感染を起こします。しかし、ウイルス株によっては中等度、低病原性の株もあります。急性死をみるもの、呼吸器症状、下痢(緑色便)、沈鬱、更に神経症状、産卵の停止などから、気付かれない程度の呼吸器症状、全く無症状で、抗体の変化によって感染がわかるという例もあります。
パイエル版:羊のどの部分を指し、どのような機能があるのですか。回腸の遠位部にあるリンパ組織です。この部分の腸管の上皮細胞はマントル細胞といい、いろいろな抗原物質を取り込みます。パイエル盤では免疫リンパ球が外来抗原に対してクローン増殖をして防御します。また、羊では鳥のファブリキウス嚢のように、胎生期にB細胞が分化する場所と考えられています。
白質:脳の断面を見ると、表層部はやや灰色に見えます(灰白質)。ここは神経細胞が集まっているところです。その下側は肉眼的に白く見えます(白質)。ここは神経細胞の軸索部分(ミエリンに包まれている)が集まっているために、白く見えるのでこう呼ばれています。
反芻類:どのような動物を指すのですか。反芻は、「物事を反芻する」という時の反芻の意味です。ここでは、ある種の哺乳類が行う食物の摂取方法です。まず食物を口で咀嚼し、反芻胃に送って部分的に消化した後、再び口に戻して咀嚼する過程を繰り返すことで食物を消化する方法です。反芻動物(Ruminant)は、偶蹄目の動物でウシ・ヤギ・ヒツジ・キリン・バイソン・シカ・ヌー・アンテロープ(反芻亜目)とラクダ・ラマ(ラクダ亜目)が含まれます。
B細胞→哺乳類はB細胞がすべてのクラスの免疫グロブリンを作るが、鳥類はなぜIgEはつくらないのか?哺乳類の免疫グロブリン遺伝子には全てのクラス(M,D,G,A,E)があるが、鳥類から哺乳類に分岐したあと、IgGの遺伝子が重複してIgEの遺伝子ができたので、鳥類にはIgEを作くる能力がないということです。
ヒトのゲノム内の動く遺伝子の化石はどうしてあるのか?ゲノム上にどうして大量に動く遺伝子の化石が残っているかは不明です。トランスポゾン(動く遺伝子)として働いていた遺伝子が、遺伝子変異や置換などを起こすうちに、分断され、トランスポゾンとしての機能を失い、化石のように残ったものです。そのうちに機能が分かるかもしれませんね。いずれにせよ、環境変化に適応したり、種が新しい環境に放散していくうえで、遺伝子がゲノム上を動き回ることが必要となったことが非常に多かったことを示しているとは思います。
ヒトの初乳:ラクトフェリン以外にどんなものが含まれていますか。ヒトの初乳は、その後に分泌される成乳に比べて少し黄みがかっていて、量もわずかしか出ません。乳糖、脂肪分は少ないのですが、ビタミンA, βカロテン、ビタミンEは非常に多いです。ナトリウム、カリウム、クロル、亜鉛などのミネラル類も多く含まれています。また、蛋白成分が多いのが特徴です。この中には分泌型IgA、ラクトフェリン、リゾチームなどの成分が多く含まれており、新生児の喉や消化器官に免疫力や殺菌力を与えています。
ヒトの初乳は、なぜわずかしか出ないのか。ヒトに限らず初乳は異常生理乳です。本来、新生児の栄養源として与えるバランスの取れた乳ではありません。あくまで新生児を感染から守る目的で、経口的に感染抵抗性を付与するための乳です。
ファブリキウス嚢とは。鳥類では、B細胞が分化を起こす部位。液性免疫の中枢。総排泄口(クロアカ)の背側にある。ファブリシウスにより発見されました。
ヘテロフィル:ヘテロフィルはなぜ酸性(酸性色素に染まりやすい)を示すのですか?人の好中球はほぼ中性(酸性、塩基性色素のどちらにも染まりにくい)であり、ヘテロフィルも同じ働きを持つのなら中性の方が体内的に安全そうに思えます。顆粒が酸性ではなく、エオジンのような酸性色素に染まりやすい顆粒を持っているということです。ウサギやモルモットの好中球も偽好酸球で、エオジンに染まります。顆粒に含まれる酵素群の組成の違いで、酸性色素に染まりやすかったり、塩基性色素に染まりやすいということで、中性だから安全?というわけではありません。
無羊膜動物:魚類、両生類の卵は水中に産み落とされます。胚の栄養は卵黄嚢に入れられていますが、胚の周囲は水なので羊水(および羊膜)は必要ありません。卵膜(漿膜)を通して呼吸します。陸上に産み落とされる卵は、胚の周りに水がないので、等浸透圧の羊水を入れる羊膜が必要となります。
盲腸扁桃:ニワトリには哺乳類のような体表の付属リンパ節は存在しません。胸腺(T細胞中枢)、ファブリシウス嚢(B細胞中枢)を除くと、脾臓の他は、パイエル盤と盲腸扁桃(盲腸の起始部にあるリンパ組織)が二次的リンパ組織となります。孵卵13日目頃までにファブリキウス嚢に濾胞形成が起こり、孵化直前には約1万個のリンパ濾胞が観察されます。二次リンパ器官としての盲腸扁桃やパイエル板にリンパ濾胞が形成されますが、それは孵化後のことです。
ラクトフェリン:どのような物質ですか? 母乳・涙・汗・唾液などに含まれる鉄結合性の糖蛋白質です。1939年に牛乳中に含まれる「赤色蛋白質(鉄を含んでいるため)」として報告されました。ラクトフェリンの立体構造は、血漿中の鉄輸送タンパク質であるトランスフェリンや、卵白の鉄結合タンパク質であるオボトランスフェリンと共通します。しかし、ラクトフェリンの鉄結合性は極めて強く、生体内では鉄輸送蛋白質というよりも、鉄を捕捉し周囲の環境から取り除く機能を果たしています。
ルーセットオオコウモリとは?オオコウモリもココウモリも夜行性です。しかし、オオコウモリは夜行性ですが、視覚を使います。オオコウモリの眼が大きいのはそのためで、霊長類のように両眼視(立体視)でものを見ます。ココウモリは耳が複雑で大きく、目は小さく、鼻は広がってます。これはココウモリがエコロケーション(反響定位)をするため、長音波の発する鼻が広がり、反射音を聞く耳が発達しています。オオコウモリの中でルーセットオオコウモリだけは、視覚とエコロケーションが可能です(メインは視覚)です。そのため、オオコウモリのように、外で木にぶら下がって生活もしますが、ココウモリのように洞窟の中でも集団生活をします。
RTPの役割:レトロトランスポゾン(Retrotransposon, RTP)は、逆転写酵素を持つレトロウイルスに
由来するトランスポゾンの1種です。トランスポゾン(transposon)は、細胞内においてゲノム上の位置を転移 (transposition) することのできる塩基配列です。動く遺伝子、転 移因子 (transposable element) とも言われます。 DNA断片が直接転移するDNA型と、転写と逆転写の過程を経るRNA型があります。RTPは、多くの真核生物組織のゲノム内に普遍的に存在します。RTPは、自分自身をRNAに複写した後、逆転写酵素によって DNA に複写し返されることで「転移」します。RTPに乗った遺伝子を運ぶことができます。
クモの目は8個あると聞いたことがありますが、全て複眼なのでしょうか。知りませんでした。調べてみました。蜘蛛の眼の数は多様性があります。8,6,4,2,0個の眼を持つ蜘蛛種がいます。眼が多い種は目に頼って生活をし、眼がないものは他の感覚系に頼っているようです。しかし、眼の多い種はぼやけて見えるという弱点があるようです。動き回って餌をとるのではないので結像は明瞭でなくてもいいのかもしれません。また、蜘蛛の眼は単眼です。眼の位置は、8眼球種でも中央に集まっている種、円形に散っているものなどがあります。解像度の悪い目を持つ蜘蛛の中で、巣をつくらず徘徊して獲物を捕るハエトリグモは2つの眼が大きく進化し(残りの2つは小さい)獲物を捕まえやすいようになってます。
第7回は、事実上、最後の講義になります。第8回はこれまでの講義の総まとめです。7回は霊長類(サル類、類人猿、そしてヒト)の進化について概説します。そのあとでヒトの特性を理解するために、脳を中心に類人猿とヒトの違いについて紹介します。ゲノムが解き明かされる中で、脳の秘密は最後のテーマかもしれません。脳の進化と社会に関わる問題は、狭義の生物学を超える問題でしょう。コンピューター科学の工学、人文・社会科学が力を発揮する分野かもしれません。
なぜヒトはサル類と違い言語を話すようになったのですか。サルでも少しの音声言語はあるよう
です。ヒトで進んだのは、①咽頭部分と口腔の構造が変わって、いろいろな音を発語できるようになった。②脳の聴覚領野と運動領野に、それぞれ音声認識と発語のための領域が発達したためです。原因か結果かは、わかりません。そうした個体が生存に有利になり、徐々に選択されてきたのでしょう。
ヒトなどのゲノムの大部分は最終的にたんぱく質の設計部になるのは2%程度であるとされているが、重要な構造だけを残して子孫繁栄していけば異常な形態の生物を減らすことができるのにそうしないのは何故ですか。ゲノムの進化で見たように、脊索動物から脊椎動物になる時に、おそらく、少なくとも2回のゲノムの重複が起きています。重複された遺伝子の多くは偽遺伝子として機能を持たなくなったり、少し機能を変えて新しい遺伝子になったりしています。偽遺伝子はまた本物の遺伝子と組み換えて多様性を作り出します。ヒトのゲノムの一部は、さらに可動因子により染色体上を移動したり、ウイルスやトランスポゾンによりいろいろな遺伝子(情報)を取り込み、利用したり、部分的に捨てたりして来たのでしょう。しかし、それでも何故、あれだけの一見意味のない?情報断片を持ち続けるのかは正直わかりません。紫外線や放射線、有害化学物質でゲノムが傷つけられる時に、本物の遺伝子を守る影武者のように置いているのでしょうか?ちょっと突飛すぎるかも。しかし、脳も、免疫系も新しいシステムを作ったから古いシステムを消すかというと必ずしもそうではありません。高等生物にとって冗長性(リダンダンシー)は、何か意味があるようです。
人はチンパンジーの子供時代のまま大人になって子孫を残すという意味がよく理解できませんでした。どういう意味ですか?①チンパンジーの新生児、幼児とヒトの新生児、幼児は、形態的によく似ている。②小児時代は、形態だけでなく、その行動様式(ものまね、好奇心の旺盛さ、学習の能力)も類似している。③しかし、その後、ヒトはものまね、好奇心の旺盛さ、学習の能力を維持したまま成長を続け、性成熟しても、形態や行動様式は変わらない(生涯こうした性格を維持する)。しかし、チンパンジーは性成熟期には、小児期と違う成体の形態(長い腕、とがった口など)になり、行動様式もパターン化したものになり小児期のような柔軟性を失う。こうした点から、人はチンパンジーの子供時代のまま大人になって子孫を残す(ネオテニー)という考えが示されました。
人類は二足歩行をし、手を使えるようになることでさらに脳を発達させたとも言われているが、そもそもなぜ人類は弱肉強食の世界で、今の猿のように牙や力を持つ進化を選ばずに脳の進化を選んだのか。脳の進化を選んだというよりは結果論です。約1千万年前に、アフリカの大地溝帯が隆起した時、熱帯雨林から東側に出来た草原に降りたのが、類人猿とヒトの共通祖先の1群です(~800万年前)。その後、雨林に残ったチンパンジーと猿人が分岐します(700~500万年前)。乾燥と寒冷化により、果実食などが困難になり、草原の草食動物をとって食べる(草食から肉食へ)様になります(200万年前)。狩猟生活のための石器を開発する能力と手を自由に使う能力を持ちます。150万年前頃、火を使い、狩猟した肉を料理する文化が盛んになり、動物性蛋白と動物性の必須脂肪酸(脳の最大構成成分)を得て、脳が拡大します。拡大した脳で、狩猟社会と武器を開発し、草食獣や肉食獣を抑えて支配者としての地位を獲得します。社会構造を複雑化、大型化し、村を作り、1万年前に農耕をはじめ、定着した文明圏を形成し、4大文明を起こします。以後は言語の発達、歴史の記録により情報を蓄積し、猛スピードで進化を遂げました。
人は生殖目的以外にも性交を行いますが、それは脳のネオテニーと関係がありますか?他の動物は交尾に対して、人間ほど快楽を感じているのでしょうか?①子サルなどでは遊びに近い感覚でマウンティング(交尾的な行動)をよく行います。ヒトの性交への好奇心は、ネオテニー的かもしれません。②しかし、サル類ではマウンティングは社会的な順位付けにも使われるので、単純な交尾行動ではありません。③動物が交尾に関して快感を覚えるかは不明です。多くの動物では生殖行為は本能的なものですし、無警戒行為ですから、リスク上、長々とやる行為ではありません。④しかし、日本ザルなど高等サル類では自慰をするものがありますから、霊長類の進化過程で快楽的な情動的神経処理回路につながった可能性はあります。交尾行動を報酬系や快感につなげることは遺伝子を残す目的からすれば理にかなってはいます。
恐竜が生きた年月は猿から人間に進化した期間よりもずっと長いですが、人間のように高い知能をもった恐竜はいなかったと考えられているのでしょうか?猿が高度な人間に進化したのは手の親指とその他の指の対向性にあると思うのですが、その対向性を持つ恐竜も、高い知能を持っても、おかしくはないのではないかと思うのですが。人間のような知能を持った恐竜はいなかったと思います。恐竜が多様性を持って繁栄するよりもずっと前に、爬虫類と哺乳類は、両性類から分岐しました。氷河期と低酸素で多くの動物が絶滅する中において、小型で、夜行性で、恒温動物の哺乳類の祖先は生き延びました。爬虫類と異なり恒温動物となった利点はいろいろありますが、効率の良いエネルギー産生系を開発したことは、脳の発達には必要でした。地球が温暖化し、大気中の酸素が増えたこと、サル類から分かれて草食から肉食になり、動物性蛋白と脂肪、酸素と糖を手に入れられるようになり、急激に脳が拡大し、高次認知機能が向上しました。手の利用(指の対向性)、火の利用、家族構成・社会構造、幼形成熟様々なものが、相互に影響して脳の発達を可能にしてきたと思います。こうした条件が満たされた状況は結果的に珍しいと思います。恐竜の全盛時には、こうした条件はそろわなかったのでしょう。
人よりも大きな脳を持っていたにも関わらず途中で滅んでしまった旧人、新人がいるのはなぜですか?面白い質問です。①大きい脳を使いこなせなかった?ハードウェアは出来たが、ソフトウェアが追い付かない。②大きい脳を生かせる環境(社会環境、栄養環境など)になかった?脳は他の組織・器官よりも、より多くの酸素と糖を必要とします。これを維持するのは簡単ではないでしょう。③あるいは、感染症の流行などにより滅んだ。④単に、後に来た現生人類たちよりも繁殖効率が悪かった・・・など、いろいろ考えられます。
これからヒトが生物として進化していくにあたって、人に発達する能力などありますか?あるとは思いますが、具体化的にどのような能力か?発達する能力というよりも、生物学的には、そうした潜在能力を持った人間が次を担っていくということでしょう。①これまで以上に情報が氾濫するだろうから、情報の真偽、軽重を素早く判断する能力?②人間の立場から離れて物を考え、戦略を立てられる能力。③我々は、homo sapiens/sapiensですが、homo sapiens/sapiens/sapiens(賢い賢い賢いヒト)であり、ネオテニーの能力を拡張するとしたら、長寿で思慮深く、経験知を実際に生かせるヒトとして、元老風の人種でしょうか?時たまテレビで見る未開地の仙人みたいなヒトでしょうか?わからないですね。
微生物型ロドプシン:ヒトがもつロドプシンと古細菌、真正細菌、原生生物のもつロドプシンはなにが違うのですか。また、なぜ違うロドプシンをもつようになったのですか?
ロドプシンの構造: ①ロドプシンはオプシン(7回膜貫通型蛋白)とレチナール(ビタミンAから作られる)分子から出来ているG蛋白結合の光受容体です。②立体構造は、7本のαヘリックスが束になって膜を貫通し(N末端が外側、C末端が細胞質内)、中心のポケット内にクロモフォアのレチナールが結合しています。③光が当たると、レチナールはシスからトランスに代わり、オプシンが構造を変え、G蛋白が活性化され、刺激が伝導されます(視神経への信号となります)。このように明暗信号として桿体細胞にあるロドプシンが活動します(動物型ロドプシン、2型)。
色覚:桿体細胞のロドプシンのオプシン蛋白とアミノ酸がわずかに異なるオプシン蛋白群が錐体細胞にあります。フォトプシンと呼ばれます(桿体細胞のオプシンをロドプシンというなら、錐体細胞のオプシンはコーノプシンのほうが分かり易い)が、ヒトの3種類のフォトプシンの最大吸収波長は、それぞれ黄緑、緑、青紫のオプシンです(3色覚型)。それぞれの波長で刺激が伝導されます。
古細菌の中には光合成を引き起こすバクテリオロドプシンと呼ばれるプロトンポンプを発現するものがあります(微生物型ロドプシン、1型)。ロドプシンと同様に、バクテリオロドプシンもレチナールを持ち、7つの膜貫通αヘリックスを持ちますがGタンパクとは結合しません。また藻類は独自の光ゲートイオンチャンネルを含んだチャネルロドプシン2と呼ばれるオプシンを持つことが知られています。 20世紀には微生物のロドプシンは特殊な環境に棲息する特殊な生物だけが持っていると考えられていましたが、今世紀に入ってゲノム解析の進化により海の表面に棲息する微生物の約7割がロドプシンを持つことが分かってきました。
さらに、イスラエルのガリラヤ湖に生息するさまざまな微生物の遺伝子を網羅的に解析したところ、新型のロドプシンが見つかり、そのアミノ酸配列はそれまでに知られているタイプ1ともタイプ2とも大きく異なっていることが分かりました。また、これまでのロドプシンと異なり、オプシンのC末端が外側に、N末端が細胞内に出ています。この型のロドプシンには500種類を超える類似タンパク質が見つかりました。真正細菌、古細菌、藻類(原生生物)から巨大ウイルスにまで見つかっています。この第3のロドプシンとも言うべき蛋白質群にギリシャ語の「太陽」からヘリオロドプシンと名付けられました。
ロドプシンは7回膜通過型蛋白(オプシン)と中心部にレチナール(クロモフォア)を持つ点では共通ですが、光の波長域を反応に変えるオプシンのアミノ酸変異、オプシンの構造変化を利用する方法(プロトンポンプ、イオンチェンネル、G蛋白など)の多様性など、それぞれ環境に合わせて、生物が独自に進化させてきたのでしょう。
ネアンデルタール人と現代人でアミノ酸配列の異なる具体例な遺伝子は6つで、そのうち3つは皮膚の構造に関わる遺伝子ですが、残りの3つは何に関わる遺伝子なのでしょうか?
ネアンデルタール人の遺伝子解析は、その後も例数を積み重ねていました。5万2000年前のネアンデルタール人女性について、全ゲノムの高精度な塩基配列を決定したことを、ドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所の研究者らが科学誌「サイエンス」に発表しました(全ゲノム解析は2例目、2017年)。現代人の遺伝子との比較から、皮膚関連の遺伝子「POU2F3」は東アジア人の約66%で、体色と関係が強い遺伝子「BNC2」はヨーロッパ人の70%で見つかっています。エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)、胆汁性肝硬変、クローン病、2型糖尿病などの発症に関連する遺伝子も発見しましたが、その影響力はまだ確認できていません(2014年)。
今回、新たに調べられたネアンデルタール人ゲノムのいくつかの領域が、一部の現代人のゲノム中にありました。「血中コレステロール濃度」、「統合失調症関連遺伝子ADAMTSL3」、「摂食障害」、「関節リウマチ」などのさまざまな健康問題と密接に関連している部分と遺伝子が一致していることが明らかになりました。
他方、現代人とネアンデルタール人で大きく異なる領域の遺伝子群を調べると、特にネアンデルタール人由来の脳と精巣に関わる対立遺伝子に下方制御がはっきり見てとれたということです。これにより「70万年前頃にネアンデルタール人とホモ・サピエンスの系統が分岐した後に、脳と精巣に急速な進化があった可能性があり、両系統の違いが生まれたのではないか」、と研究チームのメンバーであるジョシュア・エイキー氏及び同大学のラジブ・マッコイ氏はコメントしています。面白いですね。
You Tubeの第7回の講義は、16、生物進化7回の1霊長類・ゲノム、17、生物進化7回の2ネオテニー、18、生物進化7回の3脳と情報の3本です。
16、生物進化7回の1霊長類・ゲノム
https://www.youtube.com/watch?v=TwAY6mSSm3w
17、生物進化7回の2ネオテニー
https://www.youtube.com/watch?v=m6LGuQGCvdA
18、生物進化7回の3脳と情報
https://www.youtube.com/watch?v=13EDnqrzzV4
おまけ
地球の気温変動がどのようにして起こったのか、生物の5回にわたる大絶滅と、絶滅後の生物学的ニッチを埋めるための生物種(科)の多様性の出現との関係をまとめてみます。
5回の大絶滅(4.4憶年前、3.6憶年前、2.5億年前、2億年前、6千6百年前)のうち、最後の回は小惑星の衝突です(恐竜の絶滅)が、その他は、大爆発に続く氷河期とそれに続く低酸素・乾燥期と考えられているようです。
大気中の酸素濃度の変化:スライドのグラフを見ると、酸素濃度が30%になるところと、30%から20%に戻るところがありますが、それぞれどのような仕組みで酸素濃度の変化が起こったのでしょうか?また、酸素濃度変化前後では生態系ひいては生物にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
大気中の酸素濃度は最高期が3億年前の35%、最低期は2億年前の12%のようです。その後1億~9千万年前に30%まで上昇し、徐々に20%前後になりました。地球は3億6千万年前(両生類が上陸したころ)に、温暖期に入り、氷河が消滅します。大森林が形成され(石炭紀)、樹木を分解する真菌類が、まだ上陸していないため、光合成により酸素が上昇し、3億年前に35%になります。3億年前には昆虫が栄え、爬虫類が出現します。
他方、炭酸ガスの減少により、温室効果が減少して寒冷化に向かいました。また、リグニン(樹木)を分解できる真菌類が上陸し、酸素濃度は徐々に下がりました。2億5千万年前(ベルム紀から三畳紀へ)には、ローレンシア大陸、バルティカ大陸、シベリア大陸が衝突しパンゲア大陸ができますが、生物の大量絶滅(ペルム紀の大絶滅)が起きました。過去の大量絶滅の中でも最大で、海生生物の95%、全生物でも90~95%が絶滅しました。これは、メタンハイドレートが大量に気化し酸素濃度が著しく低下したためと考えられています。2億2千万年前には、カナダに隕石が落ち(直径100Kmのクレーター)、生物の絶滅がおきました(三畳紀末)。そして2億年前には酸素濃度が最低(12~15%)になりました。
その後、温暖な気候が続き、徐々に酸素濃度が上昇し、二酸化炭素濃度が減少しました。ジュラ紀(2億年前)、白亜紀(1億4千万年前)を通して恐竜が繁栄しました。恐竜は気嚢をもち低酸素環境に対応できました。しかし、哺乳類の祖先の横隔膜をもつ単弓類は低酸素環境に対応できずに衰退しました。また、2億年前からパンゲア大陸は分裂を始め、1億4千万年前までに現在の大陸に分裂しました。酸素濃度が30%までに回復した約1億年前は恐竜の全盛時代です。
6千5百万年前に、メキシコに隕石の衝突(クレータは160km)があり、生物の大量絶滅がありました(白亜紀末~新生代)。恐竜もこの時滅びました。約4千万年前から氷河の形成が始まり、寒冷化してきました。
第8回はこれまでの講義の総まとめです。バクテリアからヒトまでの進化の歴史を学んだうえで、生物の環境への適応、臓器・器官・システムの共通性と多様化、生物の多様性と分岐、相互関係などを振り返ってみましょう。そして「ヒトはどこから来たか?ヒトは何者か?ヒトはどこに行こうとしているのか?」を考えてみましょう。そのことが生物の進化を学ぶ意味だと思います。今回は質疑応答はありません。
You Tubeの第8回の講義は、今回新規に作成した19、生物進化8回の1地球環境の変化と進化、20、生物進化8回の2まとめの2本です。
19、生物進化8回の1地球環境の変化と進化(この画像は、現代生物進化2にあります)
https://www.youtube.com/watch?v=pkd9nKv40Mc
20、生物進化8回の2まとめ
https://www.youtube.com/watch?v=UZHDnbh0rBI
もし、ここまで通してみてくれた学生さんがいるとしたら、ご苦労様でした。
40億年の生命誌を7回の講義でやってしまおうという試みは無謀です。それも高校を卒業したばかりの大学1年生を対象にやるというのは、かなり大胆な試みです。しかし、なまじ専門分野に分化した後で、全体を振り返ることは結構難しいことです(自分の経験からみても)。白紙に近い状態の時にこそ、生物界の奥深さ(多様性、共通性、相互作用など)を理解しておくのは、将来どの分野に進もうと必要なことでしょう。
たとえ自然科学から離れても、「我々が何者で、どこから来て、どこに向かうのか」?というテーマは、いつも新しい問題意識です。決して人間だけの問題ではありません。
これからの2枚のスライドは、同じ内容です。40億年の生命誌を時間軸上に円グラフと図表にまとめたものです。いずれも形は違うがよく使われる図表です。しかし、これらのスライドは、誤解を生みやすい問題を含んでいます。
どちらも間違いではありません。問題は、ここに描かれている生物群がバトンタッチをして進化しているように描かれていることです。しかし、実際は重層化しているので、円グラフは360度が細菌(1階)、その上の半円が原虫(真核単細胞生物、2階)、90度の円が単純多細胞(寄生虫,、3階)、45度の円が高等多細胞(4階)、その上に脊椎動物、哺乳類、霊長類と円のパーツが重層される図(7階建て)にならなければなりません。次回は、こうした立体的な円グラフに直そうと思います。そうすれば、これからのまとめ図は、簡単に理解できます。
生物群の典型的な共存事例です。イソギンチャクは刺胞動物で、刺胞の先端からは毒性物質が放出され獲物を確保します。クマノミはイソギンチャクの刺胞に認識されないように出来ていて、むしろイソギンチャクを安全な住処として利用しています。
地衣類は真菌類で説明しましたが、最大の種数を誇る子嚢菌の約半数は地衣類です。従属栄養の子嚢菌と独立栄養の藻類(光合成生物)が一体化して生活しています。根粒菌はプロテオ細菌群にもいますが、土壌中で空気中の窒素を固定し、硝酸化して植物の根に窒素肥料を与えます。菌根菌は見かけ上、植物のひげ根のように見えますが、実際は土壌細菌が植物の根の先に細根のように連なったもので、植物に土壌中の栄養分を供給し、植物から栄養をもらうシステムになっているようです。
内生菌群は、最近、植物で見つかり注目されています。ある種の植物は、体内に細菌を共存させ生体防御系の活性化などに利用しているというものです。ブフネラ菌は昆虫に共生し、昆虫に欠損している代謝酵素を補い共存している点では、ミトコンドリアに近い存在です。キクイムシは、古い木を利用して農耕のように真菌類などを増殖させ食用に用いています。植物(古木)→真菌類→昆虫→堆肥→植物といった循環でしょうか?
下のスライドは、千葉科学大学で「動物感染症概論」の講義の最後のスライドとして使いました。動物感染症概論では甲殻類、昆虫から鳥類、哺乳類(家畜、家禽、伴侶動物、野生動物)の感染症を説明しました。他方、同時開講の「病原体の科学」では細菌(古細菌、ウイルス)から、単細胞の真核生物である原生動物(原虫)、ミトコンドリアを持つ多細胞の真菌類、そして3胚葉の寄生虫(扁形動物、線形動物)という、生物進化に沿った順序で教えてきました。
両者の関係をまとめたものが、以下のスライドです。地球上に出現した生命体が、次の生物を宿主として感染(寄生、共生)し、その後、その宿主が新しい病原体として、次の宿主に感染していった課程がわかります。一般的な寄生虫の代表である、扁形動物(条虫、吸虫)の末裔が貝類などの軟体動物に進化し、線形動物(線虫)の末裔が甲殻類や昆虫に進化し、それが、動物感染症で教える宿主の原点となります。しかし、一部の節足動物(昆虫)は、宿主であり、また高等動物の病原体です。このように生物の相互作用は循環し、進化してきたのです。
*なお、黒い細い線は生物の進化の系列を、破線矢印は病原体の宿主生物への感染方向を示しています。
上のスライドをもとに、下のスライドに描かれている感染症の食物連鎖(病原体連鎖)という観点で自然界を見てみましょう。ヒトや家畜は、多くの感染症の教科書に書かれているように、細菌、ウイルス、原虫、真菌、寄生虫、昆虫・・・などによる感染を起こします。重症例では死に至ります(食べつくされる)。それでは比較的単純な多細胞生物病原体である昆虫や寄生虫は何に感染するでしょうか?真菌や原虫、細菌。ウイルスによって殺されます。それでは真菌や原虫は?彼らの病原体は細菌やウイルスです。細菌の感染源は細菌ウイルス(バクテリオファージ)です。ウイルスにウイルスが感染する例もみられています(スプートニクウイルス、ビロファージ)。
このように病原体の連鎖(感染症の食物連鎖)は、ヒト・家畜→外部寄生虫・内部寄生虫→真菌類・原虫類→細菌・ウイルスとなり、細菌とウイルスが頂点に立っています。
一方、通常の食物連鎖では、ヒトがマグロを食べる、マグロは小魚を食べる、小魚はミジンコや甲殻類や軟体動物の幼生を、彼らはプランクトンやワムシを、ワムシは原生生物(現生動物や単細胞藻類)を、原生生物細菌を食べるといった順序です。
すなわち細菌→原生生物→単純多細胞動物→軟体動物等の幼生→小魚→マグロ→ヒトという順番です。
上記2つの連鎖を見ると、①細菌(ウイルスを含む)は、全ての生物に感染し壊していく(自然に戻す)ターミネーターであり、スイーパー(掃除屋)です。他方②細菌は、全ての生物の食物連鎖の原点であり、スターター、イニシエーターです。ターミネーターとイニシエーターが同じであることは非常に重要なことです。以下のスライドに示すように、これが同一であるために40億年にわたって環境循環が可能になっているのです。
環境破壊の基も深刻な点は、その破壊がどのようなものであれ、どのような機序であれ、この循環を途絶えさせるリスクを持つ点です。
講義を始めるときから、最後のスライドはこのゴーギャンの絵にしようと決めていました。ゴーギャンは子供時代を南米で過ごし、成長してパリに戻ります。時は印象派の充実期で、ゴーギャンも印象派の新しい旗手として活躍します。ゴッホと一緒に暮らしたこともあります。日本の浮世絵はジャポニズムとして印象派に強い影響を与えましたが、ゴーギャンは日本ではなく、タヒチ島に惹かれました。何度もタヒチ島を訪れ、その生活様式に強く惹かれていきます。この絵は、彼が死ぬ数年前に描かれたものです。ボストン美術館に飾られています。右下に妊婦が、中央に成人が、左下に瀕死の女性と死神が描かれています。
タイトルは左上に3行書かれています。「ヒトはどこから来たか?ヒトはなにものか?ヒトはどこにいくのか?」この疑問は、哲学者や芸術家とともに、生物学者や自然科学者にとっても重く奥深い問題です。生物進化はこの問題を解く、一つのキーかもしれません。
My logとともに、約束なのでここにも模範解答?を載せておきます。