東大農学部付属牧場開設75周年記念
農学部付属牧場長時代を振り返って 吉川泰弘
ホームページ(https://www.ayyoshi.com/)の「プロフィール」で調べると、2006年4月から定年退職の2010年3月まで4年間、東京大学農学部付属牧場の牧場長を兼任していたと記録されています。定年後、北里大学獣医学部で2年、千葉科学大学危機管理学部で6年、岡山理科大学獣医学部で6年の教員生活を終え、2024年4月に東京に戻りました。今は共和化工・環境微生物学研究所の所長を務めています。
先日、北海道大学で「BSE発生から四半世紀」という題で市民講座の講演をしてきましたhttps://youtu.be/-1KWIl4nhOE?list=LL。振り返ると、牧場長の時は内閣府食品安全委員会でプリオン調査専門委員会の座長をやっている時でした。牧場だけに集中できないで、任務を全うできたかどうか怪しい気がします。実際には、牧場の教授として赴任されていた眞鍋昇先生と、獣医内科学の小野健一郎教授(副牧場長)に助けられて牧場の運営を進めてきました。
BSEとの関連では、プリオン不活化に好気性好熱菌による高熱生分解を試みたり、プリオン遺伝子ノックアウト牛の作成、好気性好熱菌による病原体フリーの堆肥作成等の研究を進めました。現在の活性汚泥堆肥化の研究所は、この時の続きといえますhttps://youtu.be/Qs5t02FOaVA?list=LL。さらにプリオンの不活化にはテラヘルツのパルス電磁波(CAC717)による不活化や、アルツハイマー病のアミロイド蛋白、タウ蛋白の凝集阻害という新しい予防・治療法の開発へと繋がっていますhttps://youtu.be/ELoivDtHwEo?list=LL。いずれも東大牧場時代の経験が基礎となっています。
東大定年後、約15年間は次世代の獣医師の育成教育に携わってきました。東大時代は次世代の研究者を育てることを目指してきたように思います。しかし、長い目で見るとやはり、獣医学の基盤は産業動物であるという気がします。21世紀の最も重要な課題である感染症統御、公衆衛生、食料安全保障、環境保全、SDGs問題の全てにかかわってくるのが産業動物です。その意味では付属牧場が獣医学の礎としての機能を発揮してくれることを期待し、微力ながら支援したいと思っています。