2015年9月7日、あいにくの雨模様でしたが、47人の研修生の皆さん、興味を持って聞いてくれてありがとうございました。1週間の研修ですが、体に気をつけて頑張ってください。
実験動物技術者とは何か?どのようなミッションを負っているのか?どのような役割を期待されているのか?そもそもベースとなる動物実験の意味は?科学と社会の信頼関係は?といった問題を紹介し、研修会モチベーションのスタートのしたいと思います。「科学と社会の関係」は、通常、議論の的になったり、話し合いのテーマになるような題ではありませんが、本当は非常に重要な問題です。
本講義は、ここから始めたいと思います。かつてのように自然科学が社会を牽引し、科学の発展がそのまま人類の幸福につながるという神話が崩れ始めているという認識が必要です。科学と社会はどのような関係が望ましいか?その中で、動物実験科学とは、どのように認識されているのか?考えてみましょう。
動物実験の規範となっている3Rは、どのような経緯で生まれたのでしょうか?また、動物実験を支える3つの要素、研究者・研究資源・研究支援者はどのような課題を持っているのでしょうか?社会に動物実験の必要性と正当性を認識してもらうには、どのような手続きが必要か考えてみましょう。
1959年、ラッセルとバーチが、「動物福祉(安寧)」と実験動物が動物実験の過程で受ける「痛みや苦痛」の対立をどのように融和するか?を考えた結果として「人道的動物実験技術の原則」という本を書きました。その中でいわれている3R(代替、削減、洗練・苦痛軽減)が、国際的な動物実験の倫理規範になりました。
動物実験の役割と必要性について、具体例を挙げて考えてみましょう。
例題:ノーベル生理学医学賞の研究、ポリオ研究の100年の歴史。
もう少し視野を広げて、20世紀の生命科学(生物化学と分子生物学)の発展と21世紀のゲノム科学、そしてポストゲノム科学の潮流を見てみましょう。
そもそもゲノムとは何でしょうか?どのような生命科学の基礎概念でしょうか?ゲノム科学は、また、いつか複雑系と網羅的アプローチ、情報科学、オープンサイエンスの入り口に立つ役割をはたしたと総括されるでしょう。科学は止まることなく、ポストゲノム科学へと進んでいます。何を目的にどこに向かっているのでしょう?
再び、20世紀の科学が生み出した課題とその解決について考えてみたいと思います。
個人的課題解決の衣食住から、人類としての課題解決への医(疾病)、食(飢餓)、住(環境)のアプローチを考えなくてはなりません。
最後に「技術者の道」と題して、最初の問題について、技術者の立場から考察します。
自立した、考え、進歩する技術者としての第一歩の入り口に立ち、この研修を迎えるわけです。健康に気を付け頑張ってください。